Culture

2025.04.10

蔦重が花開いた“濁り”の時代。政治家・田沼意次への再評価とは? 大河ドラマ「べらぼう」を100倍楽しむAtoZ【S】

吉原に生まれ、自力で江戸の〝メディア王〟となった男・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)の仕事からプライベートまでを、AからZで始まる26の項目で解説するシリーズ【大河ドラマ「べらぼう」を100倍楽しむAtoZ】。今回は「S=白河の清きに・・・田沼恋しき」をご紹介します! Zまで毎日更新中! 明日もお楽しみに。

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蔦重AtoZ
S=白河の清きに魚(うお)もすみかねて元の濁りの田沼恋しき

経済・文化を躍進させた田沼意次

「白河の清きに魚もすみかねて元の濁りの田沼恋しき」この狂歌は、寛政の改革の規制の厳しさに辟易した江戸庶民が、田沼時代の自由な空気を懐かしんだもの。市井で大流行した一首です。田沼時代とは、10代将軍家治(いえはる)の側用人から老中となった田沼意次(おきつぐ)が幕府の財政再建を進めたころ。

農民からの年貢が減少した当時、意次は商人を優遇する政策をとり、特権を与えるなどして商業・産業の発展を図り、税収増加に成功。意次はさらに、水田の開発、蝦夷地(えぞち)の開拓など、インフラ整備のための公共事業を敢行し、社会基盤の充実を図ります。

『田沼意次像(たぬまおきつぐぞうぞう)』(部分) 牧之原市史料館

▼田沼意次について詳しくはこちら
【賄賂政治家】田沼意次の実像|改革・政策や生い立ちから失脚までを解説

意次はインフラ事業を重視

その結果、江戸は活気を取り戻し、経済的にも活況を呈し、蔦重のような若き起業家が活躍できる世の中になったのです。しかし、天明の飢饉、浅間山大噴火など、思いがけない天災人災が相次ぎます。

千葉県北部・柏市にある手賀沼。田沼意次は干拓事業を進めていたが、失脚して頓挫(とんざ)。

放火による目黒行人坂の大火

さらに、愛息・意知(おきとも)が江戸城内で佐野政言に斬られ、早世してしまうのです。そんな折、政敵であった松平定信(まつだいらさだのぶ)らに追い落とされて、意次は失意のうちに隠居するのです。

放火事件の犯人をひっとらえたのは、鬼平の通称で知られる長谷川平蔵の父であった。『目黒行人阪火事絵巻(めぐろぎょうにんざかかじえまき)』 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2540911 (参照 2025-03-23)

意次の跡継ぎの暗殺事件が黄表紙に!

『黒白水鏡』 石部琴好 画・山東京伝 寛政1(1789)年 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/8929946 (参照 2025-03-23)

意次暗殺を暗示したかのような黄表紙も!

『時代世話二挺皷』 山東京伝 天明8(1788)年 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/9892628 (参照 2025-03-23)

田沼時代は実は、経済が繁栄した時代であり、意次は偉大な政治家であったという再評価がなされています。

ではなぜ、わいろ政治家などの負のイメージで語られ、否定的な見方がなされてきたのか・・・。それは政敵一派が後年、そのような評伝を流布したからだとか。今も昔も変わらないものが感じられます。

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和樂web編集部


構成/山本 毅 ※本記事は雑誌『和樂(2025年2・3月号)』の転載です。 参考文献/『歴史人 別冊』2023年12月号増刊(ABCアーク)、『蔦屋重三郎と江戸文化を創った13人 歌麿にも写楽にも仕掛人がいた!』車浮代著(PHP研究所)、『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化』伊藤賀一著(Gakken)
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