お芝居だけじゃない! ふらり立ち寄っても楽しい歌舞伎座
和樂web編集部(以下、和樂):歌舞伎座にはよくいらっしゃるんですか?
石井美保(以下、石井):実は私、すごく久しぶりに足を踏み入れたんです。全く初めてくらいの感覚で来たんですけれど、重厚な建物の空気感から圧倒されますね。舞台をされる方々にとって神聖な場所で緊張感もあって……、それを楽しみに訪れる方々も非日常を味わいにいらっしゃる。その特別な空気が堪能できる場なのだなと改めて感じました。
和樂:今日はお芝居の鑑賞はないのですが、それでも感じるものがありますね。
石井:お芝居を見にくるのと違ったベクトルでふらっと遊びに来てもこんなに歌舞伎座って面白いんだ! と新鮮でした。銀座にお買い物に来て、ちょっと寄るというのも良いなぁって。
和樂:美保さんの「歌舞伎初めて体験」はいつでしたか。
石井:高校生の時だったか……芸術鑑賞会のような課外授業で先生に引率されてきたのが最初でした。普段と違う、緊張感のある大人の世界というイメージで。その印象ですごくハードルを感じてしまって、よほど歌舞伎通の方じゃないと来てはいけないんじゃないかと誤解していたんです。ただ、最近お着物を着るようになって、お友達の間ではお着物で歌舞伎を見に行こう! という計画がよく出てくるんです。古典から現代物の演目まで色々あるから気軽に見られるんだよと教わって、まずそこから足を踏み入れたいなと思っていました。ちょうど今日、建物の雰囲気を味わえたので、その気持ちがさらに高まっています。
石井:これ、すごいですね。歴代の役者さんたちの写真がこんなにずらりと!
和樂:役者さんのいわゆる「当り役」の写真を中心に、思い出の舞台写真をそれぞれ展示されているんだそうです。
石井:歴代の方たちの選りすぐりショットが見られるなんて……お好きな方には一層たまらないのでしょうね。お顔立ちが代々似ていらして家々の「らしさ」を感じたり、芸を磨く中で骨格が近づいていくこともあるのかな? なんて想像が膨らみますね。化粧も興味深いです。
じっくり眺めていたら、あっという間に時間が経っていました。そろそろお茶でも。
石井:目の前でお抹茶を点てていただけて、ゆったりできて素敵な場所ですね。
着物に合わせたメイクって?
和樂:着物の時のメイクって意外と難しいなぁと思っています。美保さんはどうされていますか?
石井:着物との相性を考えると、ある程度の「きちんと感」が大事だと思います。普段ナチュラルメイクの方やすっぴん風の方は少し丁寧なメイクを意識するとグッと印象が変わりますよ。
和樂:結婚式などのセレモニー用のしっかりと濃いメイクになってしまわないか心配で……。
石井:たしかに、カジュアルめでラフな感じのメイクがお好みの方がきちんとしようとすると、盛ってしまいすぎる不安ってありますよね。でも、肌をツヤツヤに仕上げすぎない、パールやラメが強すぎたり、キラキラしすぎたりするアイテムを使わない、色味も発色の濃いものより、肌馴染みの良いものを使うようにすれば案外大丈夫なんです。
和樂:なるほど、アイテムの使い所を注意したら良いのですね。肌作りについて詳しく伺えますか。
石井:ちょうど今、ツヤツヤとしたテカリにも思われるようなツヤ肌作りトレンドが終わりを迎えていて。マットまでは行かない、少しシルキーな感じが注目されています。まさに、お洋服にもお着物にも合うメイクですね。深く悩まなくても、今出ている最先端のファンデーションなどを使うと、着物に合うメイクになると思いますよ。
和樂:トレンドと合っていると取り入れやすくて嬉しいですね。
石井:メイクの世界ではハイライトと影のコントラストで骨格を作るスタイルも流行っているのですが、お着物の場合はあまり陰影をつけなくて良いので、こちらは取り入れなくて大丈夫です。私は普段あまりパウダーを使わないのですが、お着物の時は肌の質感が全体的に均質になると良いので、必ずパウダーで仕上げています。
和樂:眉毛や口元の描き方にポイントはありますか。
石井:お着物って、纏うことで姿勢も正されるし、袖の扱いなどに意識が向くので、自ずと普段より丁寧な所作になりますよね。メイクも同じように、細やかな端々に気を遣うとしっくりくるんです。眉を描くのも、ラフなボサボサ風ではなく眉尻を最後まで丁寧に仕上げる。リップも、普段ポンポンと載せるだけのところをしっかり口角まで描く、リップラインをペンシルで引いてみるなど。小さな丁寧さを積み上げることで、作り込まないでも着物に合うメイクになると思います。
和樂:肌作りもポイントメイクも「少し丁寧に」が大事なんですね。
石井:そうなんです。時短メイクで指でアイシャドーを簡単に乗せるだけ、アイラインも引かないといったスタイルもありますが、今また丁寧にアイメイクするトレンドが来ています。すごく時間をかける必要はなくても、1色でパキッと主張するより、丁寧な陰影で表現するようなイメージです。お着物にとても向いていると思いますよ。
和装で目覚めた、耳のUVケア
和樂:これからの季節、日差しが強くなっていきますが、和装で気をつけるべきUVケアはありますか。
石井:着物は衿を抜いて髪を上げるスタイルが多いので、首周りの皮膚感をすごく見られる気がしますよね。日焼け止めはしっかり塗るし、私は飲む日焼け止めも毎日続けています。
石井:そして、必須で大事だなぁと思ったのは、耳です。
和樂:耳、ですか!
石井:耳が日焼けしていると、そこだけ黒いのが目立ってしまって、違和感がありました。洋服ばかり着ていた頃の私は、顔さえ焼かなければなんとかなると思っていて。普段放っておくことが多かったのですが、着物を着るようになって、顔や首周りの全体的な色や質感を統一する大切さを痛感しました。以来、耳にも日焼け止めを十分塗るようになりました。
和樂:美容家のルーチンを変えた着物の力!! (笑) 日焼け止めをしっかり塗って、着物を楽しみたいです。
石井:ふふふ。
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続きは4月に。
石井美保さんがお着物でおでかけするようになったきっかけ、着物のスタイリングをする上で大事にしているポイントを伺います。
インタビュー・本文/小俣荘子 写真/篠原宏明 撮影協力/株式会社丸山海苔店、松竹株式会社
歌舞伎座 ギャラリー回廊
GINZA KABUKIZAの憩いのスペース「歌舞伎座 ギャラリー回廊」。回廊を巡り歌舞伎の歴史に思いを馳せ、美味しい抹茶でお芝居談義したり、「屋上庭園」で自然を満喫したりと様々な楽しみ方ができる場所です。
https://www.kabuki-za.co.jp/kairou/
寿月堂 銀座 歌舞伎座店
1854年創業の丸山海苔店が始めた日本茶専門店。歌舞伎座屋上の日本庭園が臨めるテラス席、カウンター席、テーブル席有り。茶の湯と禅の本質は同一であるという「茶禅一味」をコンセプトに、日本茶の美しさを世界に届けています。築地・銀座・フランス パリ店の3店舗を展開しています。
東京都中央区銀座4-12-15歌舞伎座タワー5階
https://www.maruyamanori.com/
四月大歌舞伎
2024年4月2日(火)~26日(金)の歌舞伎座での公演情報はこちら。
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/869