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2023.10.30

坂東玉三郎連載「私の日課 My routine」第二回「日々、お茶を一服」

「私は左利きですので、利休が言うように“茶は、ただ点てて飲むべし”の言葉どおり、流儀に拘らず自分の点てやすい方法で点てています。従って言い訳にはなりますが、写真に写っているお点前は自分流の配置になります。お茶に添えるお菓子は「とらやの羊羹」<夜の梅>を好んでいただいております」(『和樂』2023―2024年12・1月号 連載『坂東玉三郎 私の日課』第二回「日々、お茶を一服」より)

玉三郎さんは、毎日、自身でつくり樂家で焼いていただいた茶碗でお抹茶を嗜んでいるそうです。また、お抹茶には「とらや」の羊羹<夜の梅>が定番なのだとか…。和樂webでは、玉三郎さんがこだわるとらやとのご縁について。また、樂吉左右衛門家についてを紹介いたしましょう。

連載第一回はこちら
坂東玉三郎新連載「私の日課 my routine」開始! 玉三郎さん御用達・京都てっさい堂へ

玉三郎さんがほぼ毎日欠かさず、20年以上食べ続けている、とらやの羊羹

「“とらや”さんの羊羹をいただくようになってから、もう20数年以上になると思います。私が20代の頃は生菓子など普通の和菓子を用意して、それを半分にして食べていました。あるとき、“とらや”の羊羹を贈答品としていただいたのです。杉の箱に入った三本入りの羊羹でした。それを小さく切って抹茶に添えたのが始まりだったように思います」とは、玉三郎さん。

20年ほど前に贈答品でいただいた杉箱入りの羊羹

右は羊羹をそのまま切り分けたもの。左はさらに半分程度に切った、玉三郎さんがいただく大きさ。

それから20数年。「濃い甘さがとても美味しくて、小豆の味がして抹茶によく合うのでした。今いただいているのは<夜の梅>とか、<おもかげ>です。当時から、甘いものは沢山取り過ぎないという自分の生活習慣から、羊羹はやや小さめに切って食べるようになりました」と、玉三郎さん。

とらやを代表する小倉羊羹「夜の梅」は、切り口の小豆の粒を夜の闇に咲く梅に見立てて、菓銘がつけられました。「おもかげ」は沖縄・西表島産の黒砂糖を使用しています。

10代の頃から大旦那様にご贔屓にしていただいたのです。

さて、じつはとらやと玉三郎さんのご縁は、さらに遡るようです。

「思い起こせば、とらやさんの三代前の大旦那様には大変にご贔屓にしていただいていたのでした。そのご縁で二代前の旦那様にもお写真を撮っていただきました」

それはまだ玉三郎さんが10代のころでした。とらやの三代前は当代社長の曽祖父にあたる15代・黒川武雄氏(1893-1975)。二代前とは16代・黒川光朝氏(1918―1990)。写真が趣味で、まだ10代だった玉三郎さんの舞台を撮ってくれていたそうです。

「今こうして和樂で取材させていただくのですから、様々な意味でご縁というものを感じます。そして年月を通じて日本のお菓子の繊細さを実感しているのです」と、玉三郎さん。

とらやは室町時代後期の京都で創業。5世紀にわたり和菓子屋を営んできました。後陽成天皇の御在位中(1586〜1611)より、御所の御用を勤め、明治2年(1869)東京遷都にともない、天皇にお供して、京都の店はそのままに東京にも進出、現在に至ります。

2024年の干支「辰」・お題「和」にちなんだお年賀を

さて、約500年間受け継がれてきた伝統を大切に守りながらも、最高の原材料と技術を用いて、試行錯誤を繰り返し、その時代のお客様に喜んでいただける菓子づくりを探求し続けてきた「とらや」。パッケージデザインもセンスよく、これからの時期は、干支や歌会始のお題にちなんだものなど、お年賀をはじめとする年末年始のご挨拶に使えそうな菓子が勢揃いします。

2024年の干支「辰」にちなんだ干支小形羊羹5本入 干支柄化粧箱 1,620円(税込)。販売期間:2023年11月20日~2024年1月中旬(なくなり次第販売終了)

「明けの龍」1,944円(中形/税込)は、朝焼けに赤く染まった空を飛ぶ龍を、紅と緑の煉羊羹で表しています。龍は古くから崇められてきた神獣で、多くの絵画や神話に描かれており、新しい年の始まりに吉事を予感させる意匠。
販売期間:2023年11月20日~2024年1月中旬(なくなり次第販売終了)

2024年の歌会始のお題「和」にちなんでつくられた羊羹「和み雲」1,944円(中形/税込)。
日の光に照らされ色づいた彩雲(吉祥とされる雲)を白道明寺羹と薄紅色の羊羹で表しています。
販売期間:2023年11月20日~2024年1月中旬(なくなり次第販売終了)

とらや 赤坂店


営業時間:売場 9時〜18時、土日は9時30分〜
喫茶 11時〜17時30分(L.O.17時)
ランチタイム:11時〜14時
定休日:毎月6日(12月を除く)
住所:東京都港区赤坂4−9―22
電話:03-3408-2331
公式サイト:https://www.toraya-group.co.jp

玉三郎さんと樂吉左衛門家

「まさか自分で作ったお茶碗を樂様に焼いていただいて、そのお茶碗で日々抹茶を飲めるなどということは想像も出来ない世界でした」(『和樂』2023―2024年12・1月号 連載『坂東玉三郎 私の日課』第二回「日々、お茶を一服」より)
玉三郎さんと先代の直入さんとのご縁は、和樂本誌の連載内で玉三郎さんに書いていただきましたが、ここでは樂家について知るための情報をお知らせしましょう。

玉三郎さんが形成して、当代樂吉左衛門さんが焼成した赤樂茶碗。

かの長次郎から16代樂吉左衛門まで、歴代の代表作を展覧!

樂歴代は、初代長次郎はじめ、それぞれの時代を生き、己の茶碗を新たに生み出してきました。千利休居士の利休道歌の中に出てくる「守破離」の言葉にあるように、変わらない本質と時代変化の中で新たな作風を追求してきたと言えます。まさに「不易流行」。利休居士が求めた侘びの精神を歴代それぞれが軸に据え、今日まで450年にわたりその精神性を茶碗に込め「茶」と共に歩んできたのです。

そうした樂家の伝統と創造にかける歴代の作陶を真正面から捉えて、2013年に『定本 樂歴代』が出版されました。それから10年。15代が隠居し直入に、16代が襲名により吉左衞門と戸籍より改名しました。それぞれの隠居、襲名を経て、『定本 樂歴代』も15代・16代の最新作品を増やし、歴代の印も完全網羅して、新たに改訂版を出版。

それを記念して、樂美術館では改訂新版『定本 樂歴代』掲載作品の中より、長次郎から16代吉左衞門までの代表作となる名品を中心に展観し、初版から10年の間に考察が進んだ、樂家と外戚になる本阿弥光悦、玉水焼三代を加えて、樂焼の歴史、作風の特色とその変遷を探ります。

開館45周年記念「定本 樂歴代」展

会期:2023年9月2日(土)〜 12月24日(日)
休館日:月曜日(但し 祝日、11月13日は開館)
開館時間:10時~16時30分(入館は16時まで)
入館料:一般1,200円  

公益財団法人 樂美術館

住所:京都市上京区油小路通一条下る
開館時間:10時〜16時30分
休館日:月曜日(祝日は開館)展示替え期間
電話:075・414・0304
公式サイト:https://www.raku-yaki.or.jp/

連載「坂東玉三郎 私の日課」は『和樂』本誌で

連載「坂東玉三郎 私の日課」は、『和樂』本誌(11/1発売)でお読みいただけます。玉三郎さんの日常から日本文化に迫る本連載。ぜひお見逃しなく!

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新居 典子

東京都港区在住。2001年『和樂』創刊準備号より現在に至るまで、歌舞伎及び、日本の伝統芸能を主に担当してきた。プライベートでも、地方公演まで厭わず追っかけてしまうほど歌舞伎や能・狂言、文楽が大好き。
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和樂web編集部

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