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蔦重AtoZ
P=「ポッピンを吹く娘」は〝お江戸ファッション〟のリーダーだった
浮世絵の美人画を喜んで手に入れようとしていたのは、男性だけではありません。むしろ女性たちのほうが、新作が発売されるやいなや店頭に駆け付け、すみずみまで熱心に見ていたといわれます。
その理由は、美人画に描かれた女性の髪形や簪(かんざし)などの装飾品、きものの色や柄、着こなしが、流行の最前線だったから。流行やおしゃれに目がない女性たちの心をくすぐる絵という一面があったのです。
歌麿の『ポッピンを吹く娘』はその最たるもの。若く美しい町娘の絵に憧れた市井(しせい)の女性たちは、われ先に真似をしていたといいます。
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つまり、美人画はファッション雑誌であり、ポスターであり、モデルはインフルエンサーのような存在。女性ファンが多かったのもうなずけます。
美人画にこのような要素を盛り込むことができたのは、吉原で女性たちの嗜好(しこう)を知り尽くした、蔦重ならではの知恵があったからこそのことだったのでしょう。