そもそも中秋の名月とは？
中秋の名月は、旧暦8月15日の夜に出る月のことで、別名「十五夜（じゅうごや）」とも呼ばれます。旧暦では、７月、８月、９月は秋の季節なので、秋の真ん中（中秋）にあたります。空気が澄んでいるため、ひときわ鮮やかで美しいとされ、名月と呼ばれるようになりました。
平安時代に中国から伝わり、貴族の間で詩歌を詠む月見の宴が催されたのが、お月見文化の始まりとされています。その後、室町時代になると酒宴を開くようになり、江戸時代には、秋の収穫に感謝して、翌年の豊作を祈る庶民の年中行事として定着しました。
なぜ月見団子をお供えするのか
中秋の名月の日は、ちょうど里芋の収穫の時期にあたり、「芋名月（いもめいげつ）」とも呼ばれます。そのため、この芋をお供えするならわしもあるよう。月見団子は、穀物の収穫に感謝を表すため、月のように丸いお団子を作ってお供えしたのが始まりだと言われています。
関東と関西では、月見団子の形が違う？
月見団子はピラミッドのように高く積み重ねますが、これは頂上が霊界と通じると考えられていたため、収穫の感謝の気持ちや祈願を月に届けるためにこの形になったようです。伝統的には三方（さんぽう）という木製の台に、十五夜にちなんで15個の団子を供えるのが一般的です。
秋の情景の一つとして、このピラミッド型の月見団子が知られていますが、全ての地域でこの形のお供えをしている訳ではありません。京都では細長い里芋を模して餡が巻かれているため、平たいお盆などに一つずつ並べてお供えします。他にも愛知県のしずく型ういろうや、静岡県のへそもち、沖縄県のフチャギなど、各地域で様々な月見のお供えが伝承されています。
お月見と月見団子に関する、 よくある質問
Q1:中秋の名月の日が、毎年変わるのはどうしてですか。
A1:これは現在使われている新暦（太陽暦）ではなく、旧暦の8月15日としているからです。旧暦は月の満ち欠けを基に1年を354日と定めているため、ずれが生じます。中秋の名月は新暦では毎年9月中頃から10月上旬の間で異なる日付になります。
Q2:中秋の名月の他にも、お月見の日はありますか。
A2:旧暦の9月13日も「十三夜（じゅうさんや）」と呼ぶお月見の日です。中秋の名月が中国から伝わったのに対して、十三夜の文化は日本で生まれたと伝わります。十五夜に続く月として「後（のち）の月」と呼ばれ、供え物にちなんで「栗名月（くりめいげつ）」、「豆名月（まめめいげつ）」とも称されます。
Q3:お供えした月見団子は、いつ食べれば良いのでしょう。
A3:月に感謝してお供えしたあと、お月見をしながら食べるのが一般的です。お団子は日持ちしないので、できるだけ早く食べるのが良いですね。
Q4:お月見というと、うさぎが関連しているイメージです。関係はあるのでしょうか。
A4:古くからの「月にうさぎが住んでいて、餅つきをしている」という伝承からきているようです。この伝承はインド発祥のもので、日本では今昔物語や各地の民話で伝えられてきました。
Q5:お月見にはすすきが飾られるのが一般的です。どうしてでしょうか。
A5:すすきをお供えするのは、稲穂の代わりだと言われています。中秋の名月の時期はまだ稲穂が実る前であるため、すすきを稲穂に見立ててお供えしたのだと考えられます。
参考書籍：『事典 和菓子の世界』中山圭子著 岩崎書店、『日本の七十二候を楽しむ』白井明大著 東邦出版
アイキャッチ：『江戸風俗十二ケ月之内 八月 月見之宴 (江戸風俗十二ケ月)』部分 楊洲周延 国立国会図書館デジタルコレクション
