INTOJAPAN

MENU

UKON

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門

注目の若手歌舞伎俳優・尾上右近ことケンケンの日本文化を学ぶ連載。今回は、東京・上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」にやってきました。オランダ絵画黄金時代の巨匠、ヨハネス・フェルメール(1632-1675)は、国内外で不動の人気を誇り、寡作でも知られています。現存する作品はわずか35点とも。今回はそのうちの9点が上野の森美術館にやってくるとあり、展覧会は大人気。昼間は混み合っているようですので、遅い時間の鑑賞がお薦めです。さて、美術館にやってきたケンケンは館内に入るなり、大きく手を広げて、「久しぶりの美術館です! やっぱり美術館はいいなあ、充電します!」と、深呼吸。「日本文化への理解を深めるためには、まず異文化に触れることが大切だと思ってます!」と、気合も充分。

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門

まずは、フェルメールの作品を見る前に、17世紀のオランダ絵画を支えた画家ハブリエル・メツー、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンらの絵画を鑑賞。案内してくださったのは、学芸員の岡里崇さんです。

オランダ共和国では、貴族たちだけでなく、裕福な市民たちの間でも自分の肖像画を所有することは習慣化していたようで、どんな地方都市でも腕の立つ肖像画の専門画家がいたそうです。また、宗教画は、文芸や歴史の深い知識と想像力を要したため、画家に高い地位を与えました。さらに、まるでそこに触れられるかのように緻密に描かれた静物画、そして日々の生活を描いた風俗画…と、約40点を鑑賞しました。

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門左/ハブリエル・メツー≪手紙を書く男≫ 右/ハブリエル・メツー≪手紙を読む女≫ともに、1664-1666年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー

こちらはフェルメールに影響された画家ハブリエル・メツーの作品。<手紙を書く男>と<手紙を読む女>という作品が対比で展示されています。左の絵の男性が手紙を書いて、右の絵の女性が受け取り、手紙を読んでいますが、メイドは緑色のカーテンを上げて、荒波を往航する船が描かれた絵を見せ、手紙があまり良い知らせではないことを告げています。絵を観る人にさまざまなメッセージを込めた絵はフェルメールへの期待を高めます。

ひとまず、オランダ絵画黄金時代の作品を見終えて、「時代によってメッセージ性も違うし、大事なことも違う。いかに売れる絵を描くかということがすごく重要な時代だったんだなというのを感じました。その中で、画家たちのいろいろな思想が渦巻いていると。それは迎合とか媚びるということにも繋がるかもしれませんが、きっと本来は絵が好きで始めた職業であるはず。でも、自分の描きたい絵が売れるわけではない時代だったわけでしょう…。そんな中でどのように絵を描いていったのか…。いちだんとフェルメールの作品を間近で見たくなりました」と、ケンケン。では、フェルメール・ルームに移りましょう。

<手紙を書く婦人と召使い>僕は、透明感を感じました!

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門素敵な空間! こちらはフェルメール・ルームに繋がる通路です。

さて、フェルメール・ルームには<牛乳を注ぐ女><手紙を書く女><真珠の首飾りの女><ワイングラス>など、欧米の主要美術館から特別に貸し出された日本初公開作を含む傑作の数々が展示されています。

「フェルメールの絵はすごく透明感があります。やっぱりそこが見る人の心を掴むのかな。ちゃんと観る人に絵を楽しんでもらいたいという想いがあって、それがないと描けない絵だと思うんですね」と、ケンケン。

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門ヨハネス・フェルメール≪手紙を書く婦人と召使い≫1670-1671年頃 アイルランド・ナショナル・ギャラリー ※大阪展・東京展どちらも展示

「この絵、好きだなあ。<手紙を書く婦人と召使い>と題しながらも、フェルメールが見ているのは完全に召使いのほうですよね(笑)。構図の中心にいますもん。貴族やお金持ちの肖像として描かれるものだった人物画。普通では主人公にならない影の存在だった名もなき市井の人を、きちっとした絵で成立させているのがフェルメールのすごいところですね。それまでの宗教画や肖像画などとはまったく違う、実世界では主人公ではないとされていた人々が絵の中で主人公になる。召使いを描くという発想自体に強いメッセージ性を感じます。そこに何か、心と心で商売しているというところを感じました。じゃないと、この透明感は出ないような気がします」と、ケンケン。

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門ヨハネス・フェルメール≪牛乳を注ぐ女≫1658-1660年頃 アムステルダム国立美術館 ※東京展のみ展示

「僕、<牛乳を注ぐ女>の腕が好きだなぁ。お金持ちの奥様じゃなくて、ちゃんと召使いの腕という感じがします」と、ケンケン。すると岡里さんが「そう。がっちりとした逞しい肉体ですね。そして質感の表現がまたすごい。パンなんかも堅い感じが出ています。日を置いて堅くなったパンを使ってパン粉をつくろうとしている場面です」。このフェルメールの作品は色使いから構成からいろいろな操作をしているそうだ。遠近法で見るとテーブルがおかしいものもある。「フェルメールは、絵をなるべくシンプルにしていくというか、肖像画などは背景とかがごてごてして、いろいろあったと思うんですが、後ろにあったものや、壁にあったものを消して白い壁にしています。いろいろ削ぎ落してシンプルにするという操作をしています。またやわらかな光の入り方はフェルメールの極めて特徴的な部分です。わりと初期のほうで、フェルメールが自分のスタイルを確立したものの中の最初期の代表作です」と、岡里さん。「じゃあ、これフェルメール誕生の瞬間ですね!」と、ケンケン。

フェルメールは操作の名人だ!

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門

「歌舞伎でも思いますが、上品なものというのは削ぎ落されているんですね。その分、エネルギーも削ぎ落されることが起こりうる中で、フェルメールの場合はそのバランスがとても良いのではと感じます。足すより減らすことのほうがエネルギーと神経が確実に要求されることだと思うし、何を削ぎ落すかということはセンシティブな問題ですが、その中で、暗かった壁を真っ白にするというのもすごい勇気だと思うし、操作するセンスがすごいですね。フェルメールは操作の達人なんじゃないでしょうか。今回、とてもいいポイントで感じました」

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門ヨハネス・フェルメール≪真珠の首飾りの女≫1662-1665年頃 ベルリン国立美術館 © Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie / Christoph Schmidt 東京展のみ展示

「最近つくづく“芸は人なり”という言葉を考えているんです。僕らの仕事も、修業して技術を高めていくことは基本中の基本ですが、その中でどういうつもりでやっていくかということをきちんと感じるべきだと思っています。11月の歌舞伎座公演で、僕は歌舞伎役者と清元の太夫として2つのことをやるために、それぞれ勉強するのですが、それを支えるのは自分の意識だったり、常日頃の判断や何を大切にするかという思いでした。ですから、フェルメールも自分が売れる絵を描くけれど、やっぱり自分の絵が好きで、楽しい絵を、美しい絵を描いて、届いた人や買った人の心に何か豊かなものが訪れることを願って描いていたんじゃないかな、と思います」

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門ヨハネス・フェルメール 《赤い帽子の娘》1665-1666年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Andrew W. Mellon Collection, 1937.1.53 ※12月20日(木)まで展示。

「美術館に来るとものすごく充電になります。やはりフェルメール展のように人気のあるものに触れると、自分にも気が溢れるような感じがします。僕は人気のあるものにはいつも触れておくべきだと思っていますので、今回もとてもいい体験でした!」と、ケンケン。

尚、この「赤い帽子の娘」の展示は12月20日まで。急いでください!

フェルメール展

会場 上野の森美術館
会期 開催中〜2019年2月3日まで
公式サイト

尾上右近プロフィール

フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました|尾上右近の日本文化入門

歌舞伎俳優。1992年生まれ。江戸浄瑠璃清元節宗家・七代目清元延寿太夫の次男として生まれる。兄は清元節三味線方の清元昂洋。曾祖父は六代目尾上菊五郎。母方の祖父は鶴田浩二。2000年4月、本名・岡村研佑(けんすけ)の名で、歌舞伎座公演「舞鶴雪月花」松虫で初舞台を踏み、名子役として大活躍。05年に二代目尾上右近を襲名。舞踊の腕も群を抜く存在。また、役者を続けながらも清元のプロとして、父親の前名である栄寿太夫の七代目を襲名。【公式Twitter】 【公式Instagram】 【公式ブログ】

撮影/桑田絵梨 構成/新居典子

【尾上右近の日本文化入門】

第1回 北斎LOVEな西洋のアーティストたち♡
第2回 大観と言えば富士?!
第3回 東博に超絶御室派のみほとけ大集合!
第4回 ケンケンが刀剣博物館に!
第5回 錦絵誕生までの道程 鈴木春信の魅力
第6回 日本建築とはなんぞや!
第7回 国宝「合掌土偶」が面白い!
第8回 永青文庫で、「殿と姫の美のくらし」を拝見
第9回 フェルメール展で充電! 作品の透明感に心奪われました

最新の記事