バロック期を代表する画家のひとりであるフェルメールと、日本の江戸時代に活躍した伊藤若冲。生きた時代も国も異なる両者ですが、それぞれの時代と場所で、飽くなき情熱で作品の中に“光”を追求。ふたりは、ほかのどの画家も到達できなかった究極の光の世界を自分のものにしました。今回は、そんな奇跡のアーティスト、フェルメールと若冲の“光の表現”に注目してみましょう。
フェルメールは、消え入りそうな光の輝きをキャッチ
ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」油彩・カンヴァス・板で裏打ち 1669〜70年ごろ 23.9×20.5㎝ ルーヴル美術館 Bridgeman Images/PPS通信社
23.9×20.5㎝と、フェルメール作品の中でもとりわけ小さなサイズの「レースを編む女」。女性の手元に注目すると、ポワンティエ技法によって、光の粒子が描かれていることがわかります。
ポワンティエ技法とは、光が反射している場所やハイライトの部分を、白い点々で描写する方法。「牛乳を注ぐ女」をはじめ、多くのフェルメール作品の中で使われています。この細かな描写によって、レースを編むという繊細な作業に視線が集まり、女性の集中力が絵を見ている鑑賞者にも伝わってくるのです。
究極の技法で若冲が描いた、発光する白い羽
伊藤若冲「老松白鳳図」一幅 絹本着色 明和2〜3(1765〜66)年ごろ 141.8×79.7㎝ 宮内庁三の丸尚蔵館
一方、若冲は、絹地の裏側からも絵具を施す、裏彩色によって色調を自在に操りました。鳳凰の白い羽が輝く「老松白鳳図」では、白を最大限に際立たせるように、裏側から黄色系の黄土を多用。裏打紙などが剥がされた状態から裏側を見ると、鳳凰の羽全体に黄土と胡粉による裏彩色を確認することができます。
「老松白鳳図」裏側
表側は、高純度の胡粉によって極細の線を描くことで、発光するような羽を実現。動植物を描いた全三十幅からなる花鳥画の大作「動植綵絵」の中でも、最後期の作とされています。
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