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2020.07.30

業平か、光源氏か。一番モテる男になる5つの技術 最強のモテ男インタビュー

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恋に説明は必要ない。だけど、モテる男に説明はつく。今回インタビューを依頼したのは、あの光源氏のモデルの一人とも言われるモテ男「在原業平(ありわらのなりひら)」だ。平安と令和、多少のジェネレーションギャップを感じつつも、現代にも役立つ「モテる技術」に関してインタビューを行った。

在原業平プロフィール

平安時代の貴族(825~880年)。父に平城天皇の皇子・阿保(あぼ)親王、母に桓武天皇の皇女・伊都(いと)内親王をもつ貴公子。『伊勢物語』の主人公とされ、あらゆるモテ伝説が残っている。『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルの一人とも。

現代においても墨田区の「業平橋」をはじめ、日本各地に在原業平ゆかりの地が残っている。1000年の時を超えて日本人の心を掴んで離さない、最強のモテ男と言えるだろう。

平安貴族・業平に聞く!今すぐできるモテ技術5選

時代が移り変わっても、人を恋する気持ちは変わらない。現代にもきっと役立つ、平安のモテ男の技術をインタビュー形式でお届けしよう。

モテたいなら「一途」であれ

在原業平(以下略):最初に大事なことを言います。モテたいなら一途になりましょう。

――一途とモテ、相反する言葉のように感じますが。

よく勘違いされるのですが、僕は「まめ男(誠実な男)」です。『伊勢物語』にもそう書かれています。一途だからこそモテてきたのです。今だって、奥さんや彼女を大事にしている一途な男は逆にモテるでしょ。

――いやいや、『伊勢物語』には数えきれないくらい女性が出てきますし、説得力ゼロです(笑)。

恋愛しているときは、心からその女性を愛しているんです。一緒にいるときはもう彼女しか見えません。彼女を家から連れ出して、2人で愛の逃避行しちゃうくらいですよ。恋しすぎて血の涙を流したこともあります。

――怖っ!でもお付き合いした女性はたくさんいますよね?

あのね、僕レベルのハイスペック男子と付き合う女性は、相手も相当なもの。僕とお別れしたって、すぐに女性の方も新しい恋人ができるんです。恋人が何人もいる女性だっていましたよ。お互い様でしょ。

――(感じ悪!)一夫多妻制の平安時代と現代では、「一途」に対する感覚がちょっと違うようですね。

恥ずかしがるな!アツアツの「ポエム」を送れ!

モテに重要なのは「和歌」、令和の時代に当てはめるなら「ポエム」ですね。

――ポエム、令和じゃなくて昭和の香りがしますが。

とにかく詩的な、情緒あるロマンティックな言葉を贈りましょう。情熱的な言葉をかけられるのが好きな女性は多いものです。

――確かにそうですが、ポエム贈られると引いちゃうこともあります。

それはね、中途半端だからですよ。相手に引かせる隙を与えない、アツアツのポエムを贈るのがポイントです。僕たち平安貴族は「和歌」という31文字のポエムを贈っていました。

――紀貫之(きのつらゆき)が、業平さんのことを「在原業平は、その心余りて、詞たらず。しぼめる花の色なくて匂ひ残れるがごとし」と評していますね。

はは。その意味をポジティブに捉えるなら「言葉から想いがはみ出すほど情熱的。それはまるで、しぼんだ花に良い香りが残っているかのよう」という感じですね。要は「そんなに上手なポエムじゃないけど、熱い想いは伝わる」ってことでしょう。多少下手でも、熱さが大事なんです。冷める隙を与えるな!

――ここでひとつ、アツアツな和歌をご紹介しましょう。

きみにより思ひならひぬ世の中の人はこれをや恋といふらむ
訳:あなたと出会って、初めて知ることができました。これが「恋」というものなのだと……。『続古今和歌集』

プレイボーイだった業平が詠むことで「初めて恋を知った」ことの重みが感じられる歌です。『伊勢物語』では、男友達に宛てた和歌となっています。それほど男友達を深く想っているということを、ユーモアを交えて伝えたのでしょう。

「場」をわきまえろ!

どんなに素敵な人に出会っても、場をわきまえて声をかけないといけません。

――声をかけてはいけない場とは?

例えば『伊勢物語』には、皇女の葬式でナンパした源至(みなもとのいたる)という男が登場します。天下の色好みで有名だった男ですが、さすがに葬式でナンパはないでしょう。

――うわぁ……。引きますね。

でしょ?至がナンパした時に詠んだ歌があるんですが、それに対して「天下の色好みのわりに、たいした和歌じゃなかった」なんて書かれてるんです(笑)。これは場をわきまえない批判の意味も込められていると思いますね。

「見た目」に気を配れ!

平安の男はみんな化粧しています。和樂webライター・瓦谷さんの記事に「寝殿造映えメイク」に関して書かれているので、読んでおいてください。(※寝殿造/しんでんづくり:平安貴族の住居様式)
今川義元はどうして「まろ顔」?メイク男子のルーツを調べたらめちゃ古かった!

――現代も「メイク男子」が増えてきていますが、まだまだ少数派です。

髪型も、着るものもめちゃくちゃ気を使います。寝るときだって烏帽子(えぼし/帽子のようなもの)外しませんから。

――すごい!徹底していますね。

服は季節感を意識して、香りづけするのも忘れません。TPOも大事です。カジュアルなデートにピシッとしたブランドスーツで来たらびっくりしちゃうでしょ?平安男子は、場に合わせたおしゃれを心がけています。

「金と権力」を手に入れろ!

最後に身も蓋もないことを言います。金と権力、実はこれが一番大事です。

――ええ……。

平安時代、これはマストです。ちなみに僕たち貴族も、血筋さえ良ければ偉いってわけじゃないんです。どんなに高貴な人でも、権力争いに敗れて落ちぶれてしまうこともあります。僕自身、もともと皇族でしたが、祖父・平城上皇が権力争いに負けたことがきっかけで、臣籍降下(皇族の身分を離れること)しています。それが歴史の授業にあった「薬子の変(平城太上天皇の変)」です。

――業平さんも落ちぶれてしまったのですか?

色々ありましたが、一応それなりに重要なポストについていました。あ、ちなみに『三代実録』に「業平は体貌閑麗(業平はイケメン)」と書かれるくらいの見た目だったので(笑)。僕より金と権力がある男はたくさんいましたが、見た目でカバーできたのはラッキーでしたね。

――『三大実録』には、「業平は、頭は良くないけど詩人肌で歌がうまい」とも書かれています。

平安時代出世するためには、和歌の才能も必要でした。「芸は身を助く」ってやつです。勉強が苦手でも、何か得意なことを見つければ金や権力を手にできると思いますよ。

業平さんから見た光源氏像と、モテの極意

――日本におけるプレイボーイといえば「光源氏」ですが、最後に彼のイメージをお聞かせいただけますか?

無茶ぶりだね(笑)。だって『源氏物語』って、僕が死んだ後の話でしょ。まぁいいや。光源氏は、血筋・容姿・生まれ持った才能・金・権力、男のほしいもの全て持っています。あれはずるい。そんな彼でも、一応モテるための努力もしていました。こちらも参考にするといいですよ。

稀代のモテ男に学ぶべし!「源氏物語」光源氏の女性を虜にするテクニック5連発!

情熱的なポエムをつくるのも、金と権力を手に入れるのも、おしゃれでいるのも、努力なしには実現しない。あの光源氏だって努力している。世の中の美女たちも、並々ならぬ努力をしている。努力なしにモテはなし。まずは死ぬほど努力しろ!以上です。

――一朝一夕にモテることはないんですね。モテモテライフを送るには、日々の努力が欠かせないようです。ありがとうございました!

あとがき

日本を代表するプレイボーイといえば『源氏物語』の主人公・光源氏を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、光源氏は架空の人物。実在したモテ男といえば、在原業平が有名です。天皇の孫・ひ孫でありながら臣下に下ったという業平の生い立ちは、親王に生まれながら「源」姓を賜った光源氏と通じます。そんな業平をもっと身近に感じていただきたく「妄想インタビュー」を行いました。

▼その他の妄想インタビューシリーズはこちら!
妄想インタビュー

『伊勢物語』は、モテにモテた業平の人生や和歌をもとにつくられた物語だと言われ、作者は不明です。人生そのものが物語になってしまうなんて、すごくドラマチックだと思いませんか?

藤原高子(二条の后)と逃避行する業平
『祇園社頭油法師驚忠盛/業平朝臣負二条后落引図』国立国会デジタルコレクションより

業平は大変なイケメンだったそうですが、今となってはその姿を拝むことはできません。それでも「絶世の色男」として今なお語り継がれているのは、彼の情熱的な和歌にあるでしょう。最後に、業平の有名な和歌をひとつご紹介します。

世の中にたえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし
訳:この世に桜さえなければ、心穏やかに春を過ごせたでしょうに。

桜の美しさに心奪われる心情を詠んだ歌ですが、桜を女性に置き換えることもできます。「あなたに出会わなければ、私はこんなに苦しまずにすんだのに……。」

業平のテクニックをふまえたうえで、ぜひご活用ください↓↓↓


モテ男がやっている! また会いたいと思わせる飲食店デート攻略法(ブックトリップ)

在原業平に関する基礎知識はこちら

3分でわかる記事は以下よりどうぞ!

書いた人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。