Culture
2020.10.20

「美貌」と「テクニック」江戸時代の遊女に必要なもの、あとひとつは?

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江戸時代は、幕府公認の吉原をはじめ、全国各地に遊女と一夜をともに過ごせる妓楼が建ち並んでいました。

遊女は親や亭主の借金を抱えていることがほとんどで、返済のためにたくさんの客をとらなければなりません。そんな江戸時代の遊女に必要とされた「3つのもの」をご紹介します!

遊郭って何?吉原は何をするところだったの?3分で分かる遊郭のすべて

遊女に必要だったもの

寛政年間に書かれた『部屋三味線』には、売れっ子遊女の条件が3つ挙げられています。

一に顔、二に床、三に手。「顔」は美貌、「床」は性行為のテクニックのことを指しますが、あと一つの「手」とは一体何のことでしょうか。

『青楼美人六花仙 扇屋花扇』画:鳥文斎 栄之 メトロポリタン美術館蔵

最近「あざとい」という言葉をよく聞きます。もともと「ちょっとズルイ」とか「たちが悪い」という意味をもつ言葉ですが、最近は「わざと相手の心をときめかせるような、計算された振舞い」のような意味でも使われています。「あざとカワイイ」なんて言葉も聞きますね。

「手」とは、そんな“あざとい”テクニックのこと。お客を繋ぎとめるために泣いたり拗ねたり、時には甘えてみたり……。それを真にうける男性もいれば、あざといとわかっていてもつい通ってしまう男性もいたことでしょう。

遊女秘伝のテクニック

遊女たちは、素人の女性にはない「性のテクニック」をもっていました。中でも江戸随一の遊郭・吉原には、吉原秘伝のテクニックがあったのだそう。

画:喜多川歌麿 メトロポリタン美術館蔵

具体的なテクニックを記録した史料はほとんど残っていませんが、鍛え上げられた秘伝の技に「なんとも言いようがない」と感激する武士とのやり取りが春画で見られます。

また、行為中の演技が上手な遊女も人気でした。演技とは気付かない男性が「遊女を気持ちよくさせられた」と自尊心をもつことができたからなんだとか。

男性にはちょっと悲しい?テクニックを駆使する裏の理由とは

男性を悦ばせ、できるだけお客としてたくさんお金を使ってもらう。それが性的なテクニックを駆使する理由のひとつです。しかし、別の理由があることもご紹介しておきましょう。

大正末期の吉原を描写した『春駒日記』には、「遊女が一番嫌がるのはしつこい客」と書かれています。遊女は一日に何人もの男性を相手にしているため、いつまでも“終わらない”しつこい客が一番辛かったのです。テクニックを駆使するのは、さっさと終わらせてしまいたいという理由もありました。もちろん、そのことを悟られないような「手」を使うことが大切です。

まるで騙しあいのようですが、吉原のような高級遊郭は、ただ性サービスを受けるだけでなく「疑似恋愛」を楽しむ場所でもあったのです。

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