同じ漢字を書くのに読みが違うってこと、けっこうありますよね。「最中」を「さいちゅう」「さなか」「もなか」と読むのもその1つ。小説を読んでいて、シリアスな場面でうっかり「もなか」と読んでしまい、一瞬混乱したのは秘密……。
それはさておき、漢字の読み方クイズ!
「葛」の3つの読みとはなんでしょう?
1つめは「くず」!
1つめはマメ科の植物「くず」。秋の七草の1つで各地の山野で見られ、8~9月に紅紫色のチョウのような花をたくさん咲かせます(アイキャッチ画像参照)。
根からとったでんぷん「くず粉」を使った「くず饅頭」「くず湯」「あんかけのあん」などがもっとも身近でしょうか。根を使った漢方薬「葛根湯(かっこんとう)」は、風邪、インフルエンザ、神経痛、蓄膿 (ちくのう) 症、中耳炎、肩こりなど、いろいろな症状に対して処方されます。また、花は二日酔いにも効くのだそう。
また、つるを編んで行李(こうり・バスケットのようなもの)を作ったり、繊維は「葛布(かっぷ)」という布の原料になったりと、くずは日本人に古くから親しまれてきた植物です。
語源説はいろいろあるのですが、奈良県の地名である「国栖(くず)」や、食用で粉にすること(粉為、細屑など)、「おいしい」という意味の韓語「クスハタ」から来ているとも言われています。
ちょっと怖い「くず」の話……
くずの葉は裏が少し白みがかっています。風が吹くと裏返っているのがよく見えて「裏見(うらみ)」と呼ばれますが、発音が同じことから和歌などでは「恨み」と掛けて使われます。
歌舞伎『芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)』では、これが使われた和歌を障子に書きつける場面が大きな見どころの1つとなっています。
「恋しくばたずねきてみよ いずみなる信田の森の うらみ葛の葉」
2つめは「かずら(かづら)」!
2つめの読みは、「かずら(かづら)」。つる草の総称で、1つめの読みの「くず」もつる草であることから、この分類の中に入ります。
かずらの「ずら(づら)」を蔓(つる)と見る説・「連なる」とする説、「か」を「からむ」とする説・「かかづらふ(からまる・まといつく)」とする説・動揺を表す擬声語とする説など、とてもたくさんの語源説があります。
3つめは、「つづら」!
つる草のうち、比較的太さがあって丈夫なものを「つづら」と呼びます(特にツヅラフジ)。昔話でも衣服などを入れておく「つづら」は時々出てきますが、もともとはこのつづらのつるで作っていたのだそう。弓や太刀に巻いて使うこともあります。
まるで心の中が見えそうな「葛藤」の語源
葛藤(かっとう)とは、対立して争うこと・心の中の異なる気持ちに迷うこと・煩悩(主に仏教)などを指しますが、語源の光景は、まるで人の心の中を覗けるような雰囲気すら漂います。
「葛」も「藤」もつる植物であることから、絡みつき、もつれる様子を示しているのですが、複雑な心の様子がそのまま見えるようですね。
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難読漢字クイズ!「艶やか」には3通りの読み方がある!「つややか」以外答えられる?
参考文献:
・『デジタル大辞泉』小学館
・『小学館 全文全訳古語辞典』小学館
・『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館
・『日本国語大辞典』小学館
・『国史大辞典』吉川弘文館