2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は、江戸の町人が主役。男性は着物の上に袴をつけない「着流し」というスタイルが基本です。すると時々、ちらりとのぞくのが「ふんどし」。下着が見えてしまっているけど、大丈夫?
気になるお江戸のチラリズムを調査しました。
ふんどし一丁も男の仕事着
結論から言うと江戸ではちらりどころか、男がふんどし一丁で歩いていても当たり前。当時の浮世絵を見ても、荷運びをする人足(にんそく)や人を乗せる駕籠(かご)を担ぐ駕籠かきなど、ふんどし一丁で仕事をしている男性たちが描かれています。
江戸っ子たちがつけているのは、いわゆる六尺ふんどし。約2mの帯状の布を腰に巻いて、股をくぐらせてから前か後ろで結ぶので、「下帯(したおび)」とも呼ばれます。
庶民は木綿のふんどしを使っていましたが、身分の高い人は羽二重(はぶたえ)という高級な絹地を使っていたとか。また洒落者(しゃれもの/洗練された服装や言動を好む人)はふんどしに縮緬(ちりめん)、緞子(どんす)、綸子(りんず)などさまざまな織りの絹地で、おしゃれを楽しんでいたようです。
今でもお祭りでは、白い六尺ふんどしをきゅっと締めて神輿をかつぐ男性の姿を見ることがありますね。
▼笑いながら読めるふんどしの歴史
尻丸出し姿に外国人仰天。徳川家康、細川忠興らも愛用した「ふんどし」の歴史
尻っぱしょりの男ぶり
着物のすそをからげて帯に挟む「尻っぱしょり」も、働く男の定番でした。着物のすそがすりきれないように、汚れないようにという狙いもあったと思われますが、何より足さばきがよくて、動きやすかったのでしょう。ふんどしが見えても気にせず、颯爽としているのがいい感じ。
『御殿女中』著:三田村鳶魚 出典:国立国会図書館デジタルコレクション
▼御宰ってこんな人
閉じられた女の園・大奥の秘密を知る「御宰」という男。その正体とは?
歌舞伎役者は見せふんどし
ふんどしをあえて見せていたのは江戸っ子たちのスター、歌舞伎役者です。江戸時代の「推し活グッズ」だった役者絵を見てもほら、決めポーズの見得(みえ)を切るシーンでふんどしがちらり。
歌舞伎役者の着物のすそからのぞくふんどしの前垂れを、「下(さがり)」といいます。
立派な衣装の一部で役どころによって色が異なり、「二枚目」と呼ばれる美男子や、男気のある「侠客(きょうかく)」は赤い褌をつけることが多いそう。
ふんどしは男のシンボル!?
日本の一部地域には、昭和の初期頃まで「ふんどし祝い」という風習がありました。13歳ごろの男子が初めてふんどしをつけるお祝いで、地域によっても異なりますが、成年のお祝いとして行われることが多かったようです。
江戸時代には、9歳になると「ふんどし祝い」として赤絹のふんどしを贈られて、それがすむと奉公に出されることもありました。
つまり、ふんどしは大人の男の証。
大人と呼ぶにはまだ幼い男子の、独り立ちを応援するアイテムでもあったのです。
気合を入れて事に臨むことを「ふんどしを締めてかかる」、他人の力で事を成し遂げることを「人のふんどしで相撲を取る」と言うことから、ふんどしが男性の体力や能力を象徴していたことも窺えます。
『三代目大谷鬼次の川島治部五郎と初代市川男女蔵の富田兵太郎』著者:東洲斎写楽 出典:メトロポリタン美術館
大河ドラマ『べらぼう』は江戸の遊郭、吉原が舞台です。遊女たちは冬でも裸足で、着物のすそから素足をのぞかせるのが色っぽくて粋だったといいますが、こうしてみると男性の着物のすそからのぞく足もなかなかどうして、かっこいいと思いませんか。
『べらぼう』でもすでに何度か登場している、ふんどしちらり。見逃していたらもったいない!
ぜひ注目してみてくださいませ。
▼女性の素足にもご注目
えっ、真冬も裸足!?浮世絵美女の「雪の日コーデ」は、こんなにもおしゃれ!
『青楼絵抄年中行事 上之巻』著者:喜多川歌麿 出典:メトロポリタン美術館
▼美女もチラ魅せ
見せる下着は江戸時代にも!浮世絵美女の「チラ魅せ」テクニックがおしゃれなんです!
アイキャッチ:『三代目大谷鬼次の川島治部五郎と初代市川男女蔵の富田兵太郎』著者:東洲斎写楽 出典:メトロポリタン美術館 *一部をトリミング
参考書籍:
『褌ものがたり』著:越中文俊(心交社)
『かぶりもの・きもの・はきもの』著:宮本馨太郎(岩崎美術社)
『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)
『国史大辞典』(吉川弘文館)
『改訂新版 世界大百科事典』(平凡社)