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福島県・会津東山温泉「向瀧」の
木造建築の心地よさは日々の手入れのたまもの
「木造建築というのは、大部分が木と土と紙でできている生きた建物です。だから、磨いたり、塵(ちり)を掃(は)いたり空気を入れ替えたりと、人間と同じように毎日の手入れが必要。お客様がいてもいなくても、日々の仕事は変わりません」
そう話してくれたのは、6代目当主の平田裕一さん。コロナ禍に見舞われたこの3年、予約がすべてキャンセルになった日も従業員は変わらず出勤し、客室や廊下の窓を開け放ち、掃き掃除や拭き掃除など、いつもと同じようにしていたと言います。
明治初期に創業し、ちょうど150年。「この建物はいつまでもつか?」の問いに、「半永久的に!」と即答。木造建築は的確な〝手当て〟をしていれば、ずっと生き続けることができるのだそう。たとえば柱の一部が傷んだら、その部分を切り取って別の木材をはめ込みます。障子や襖は張り替えがきき、土壁も塗り直せばいい。木造建築は日本の気候風土に合っているだけでなく、自然も物も慈しみながら生活してきた、日本人の気質そのもののようです。
「襖や障子がきつくなったら、屋根が〝重いよ、助けて〟と雪下ろしを要求している証拠です。機械類だって毎日意識して音を聞いていれば、モーター音がおかしいと気づいて修理や交換ができる。壊れてしまってからでは遅いので、耳と目と肌で感じ取ることが大切なのです」
100年後も200年後も現役でいてもらうために、毎日ていねいに手入れする。「変わらないことが私たちの進化」と、胸を張ります。
人の手でなければ成しえない〝快適〟がここに
新品の気持ちよさより手入れされた心地よさ
廊下が軋む音、戸を開け閉めする音、話し声や笑い声。
人の気配が宿のサウンドを奏でます
【湯宿DATA】
向瀧(むかいたき)
住所:福島県会津若松市東山町湯本字川向200
電話:0242-27-7501
宿泊料金:2名1室利用時1名23,250円(税込)~。※1泊2食付、1室1名利用時はプラス5,500円。
アクセス:JR磐越西線「会津若松駅」よりタクシーで約10分(送迎なし)
公式サイト:https://mukaitaki.com/
撮影/篠原宏明 構成/小竹智子
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※表示の宿泊料金は税金・サービス料込みの金額です。別途入湯税や、入浴料などがかかる場合があります。また、連休や年末年始など、特別料金が設定されている場合もあります。
※お出かけの際には宿のホームページなどで最新情報をご確認ください。