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2024.11.28

金沢に来たらこれ食べまっし!今こそ知りたい、金沢のアツいおでん文化

実は金沢は、人口比で日本一おでん屋が多い町。通年営業の専門店が数多くあり、中には創業50年を超す店も。海の幸、山の幸に恵まれ、地酒も豊富な金沢は、〝おでんで一杯〟が日常に。北陸新幹線開通後、おでんブームは加速中ですが、一度食べたぐらいではつかめないのが、この町のおでん屋の奥深さ。地元民の〝おでん屋愛〟に触れ、新しい金沢の扉を開いてみませんか?

大昔から金沢で連日満員の店は、寿司でもなくカニでもなくおでん屋だった!

金沢のおでん屋は〝町の社交場〟である

金沢におでん屋ブームが最初に訪れたのは、大正末期から昭和の頭。
お茶屋遊びや仕事の帰り、深夜労働者と多種多様な人々が立ち寄り、ある時代まで明け方までの営業が常だったとか。
ときを経ても、財布に優しいおでんをつまみに、飲んで語らうおでん屋のあり方は健在。昼間の喫茶店のように、夜はおでん屋があるのです。

「若葉」(石川県金沢市石引2-7-11 電話076-231-1876)のコの字カウンターで語らう常連客。客が心地よく過ごせるように、席を上手に采配するのも店主の腕の見せどころ。

金沢のおでん屋は〝店主が味〟なり

鍋をのぞくと、実のところ、おでん種はほぼ同じ。何せ金沢のおでんは庶民の味方。味の個性は明快だけど、価格の差はそこまでない。
地酒やビールの銘柄の差別化に加えて、一番の違いは、やっぱり店主。「この人の顔が見たくて」地元民はのれんをくぐるのです。
夜も深くなれば、主人を軸に客同士が語りあったり、差しつ差されつ飲むのがいつもの風景です。

左/「みひろ」(石川県金沢市三馬3-236 電話076-243-5149)2代目の横萩信一さん。おでん屋に流れる空気に惹かれて、大学卒業後に家業を手伝うことを決めたという。右/「酒BARのおでん バンチョーサン」(石川県金沢市片町2-21-24ビルズ2F 電話076-254-1992)の「焼売」。鉄板の上で蒸し焼きにした焼売の上からおでん出汁をジュッ。おでんの枠を超えた味わいで、これは必食!

金沢のおでん屋は、一品料理もうまい!

地元民が好きなおでん屋は、押しなべて規模が小さいのが特徴。
主人ひとりが食材の仕入れに始まり、おでん出汁(だし)の調整、単品メニューの調理まで、基本的にはひとり何役もこなします。
そのため味にブレがなく、何を頼んでもおいしく飲めるというわけ。
居酒屋に行って同じ金額を払うならば、一品料理が豊富なおでん店のほうが満足度が高い。おでん出汁を使った料理がまた最高!

地元民に聞いたおでん種ベスト5+α

北陸新幹線開通前後で登場したキーワード「金沢おでん」。しかし、おでんを愛する地元の人は「そんなもの、ない」と言い切ります。
一般的な定義は、①金沢ゆかりの食材 ②黄金色の出汁(甘くて優しい)を満たしたものを指すようですが、現場をのぞくとその幅はとても広い。
通年営業のため、加賀野菜も旬を過ぎれば、他府県の野菜に。出汁(だし)の原料も店それぞれ。大根ひとつ同じ切り方・大きさはなく、その差異の積み重ねで、競合ひしめく中を生き抜いているのです。
一国一城の主の采配をリスペクトするからこそ、地元民はひとくくりにして「金沢おでん」と呼びたくないのかもしれません。

日本各地に〝ご当地おでん〟はありますが、金沢ほど幅広く海と山の産物に豆製品、麩(ふ)まで入る地はないのかも?
まとめられないのを承知の上で、地元の人気ベスト5を選んでみました。
写真映えする練り物「赤巻」(渦を巻いている)や「ふかし」(紅白)もあるのですが、「地元の人は食べないわよ」と「三幸 犀川店」の女将(おかみ)・掛上晴美(かけがみはるみ)さん。
女将曰く、「金沢のおでんは、出汁が命。出汁でその店の味が決まります」。
となれば、出汁の吸い込みのいいものが、やはり地元では愛されるようです。

金沢に来たらこれ食べまっし! あったまっていきまっし♡

「三幸 犀川店(みゆき さいがわてん)」(石川県金沢市片町1-9-8 電話076-262-1332)で撮影させてもらいました。左/女将・掛上晴美さん。右・アイキャッチ画像/赤巻、バイ貝など金沢のおでん種は個性豊か。

1番人気「大根」 地元民はこれで1合飲めます?!

おでん鍋でじっくりと炊かれた大根は、家庭ではまねのできない味。
食べごたえもあり、酒のあてには最高に安上がり。
10月下旬から12月上旬ごろに旬を迎える加賀野菜「源助(げんすけ)大根」は水分を多く含み、甘みたっぷり。
とろける食感で大根好きを魅了。

秋冬限定の「源助大根」は年内までのお楽しみ

2番人気「車麩」 透明な出汁をた~っぷり

治部煮(じぶに)の「すだれ麩」が有名だが、古くから金沢は麩の特産地。
生地を棒に巻いて焼いた車麩(くるまぶ)は、筒状のものをおでん屋の店主が手で切るのが恒例。
ふぞろいの断面に出汁が染み込み、これが美味! 
あらかじめ輪切りを出す店もあるが、おいしさは異なる。

大きくなるほど出汁を含んで旨み増し

3番人気「バイ貝」 北陸の海の幸定番はコレ

年間を通してどの店も提供している、これぞ庶民のごちそう。
刺身で切り分けて食べられるほど大きな身の入った貝を丸ごとどうぞ。
身はプリプリ、肝もたっぷり入って濃厚。
価格は500円程度で、「カニ面」に比べたらかわいいもの。酒が進んで困る!

肝までしっかりいただきましょう

4番人気「玉子焼」 出汁巻を贅沢にいただきます

ゆで玉子も同等人気だが、「玉子焼があれば絶対食べる」という地元民の声に従い、ランクイン。
日ごろから食に贅沢を好む金沢人らしい好みがここにも? 
ちなみに「三幸 犀川店」では玉子焼も自家製。おでん出汁を生かすべく、玉子焼は甘みなし。

甘いの、塩味どっちが好み?

5番人気「つみれ」 手づくりで個性際立つ

イワシを使う店が主流だが、地元で水揚げ量を誇るメギスを使う店もあり。
練り物のおでん種は仕入れても、つみれは店主がつくるのが、金沢の伝統。
魚に脂ののる時期はさらに味わいが増し、「つみれで季節の移り変わりがわかる」というおでん通も!

ふわふわ派とゴツゴツ派、好みは分かれます

ちなみに次点は「シュウマイ」 あればつい頼んでしまう

金沢ではあたりまえ、県外の人が見たらビックリ! の一例がこの「シュウマイ」。
最初からオーダーする人は少ないけれど、酔いが回るにつれて、つい口にしたくなる典型のおでん種らしい。
たいていの店は、仕入れもののシュウマイだけど、そこは問題ではない様子。
出汁の中でヒタヒタになったシュウマイの皮と、肉汁の旨みの妙味に、「ほわわー」と気持ちがゆるんでしまうかも?

トロける皮と出汁がマッチ

別格! 冬の1番は「カニ面」 11月カニ漁解禁〜12月末までのお楽しみ

ズワイガニのメス「香箱(こうばこ)ガニ」を丸ごと味わうように手を加え、おでん出汁をくぐらせた逸品。
香箱ガニが年々高騰し、カニ面(めん)は3,000円~が相場。
仕上げに手間がかかり、来店時ひとり1回の注文が暗黙のルールで、「三幸 犀川店」では1シーズン1個までだとか。

内子、外子、カニ脚の並べ方に店主の美意識を見る!

撮影/宮濱祐美子 構成/藤田 優
※本記事は雑誌『和樂(2024年2・3月号)』の転載です。
※掲載価格はすべて税込で、価格や営業時間などは変更される場合があります。お出かけの前にご確認ください。

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和樂web編集部

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