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私がご案内します 「福光屋」営業本部 副本部長 黒田真吾さん
蔵人歴7年を経て、営業職へ。そこから飲み歩き、おでん屋愛に目覚める。手には地元でなじみの食中酒「福正宗 銀ラベル」。
金沢の、ツウのおでんの食べ方、おでん屋の愛し方
仕事柄、酒を提供するおでん屋に足を運ぶことが多い黒田さん。立場上、決まった店を挙げることはできないのは承知の上で紹介してもらった3軒は、「昔から福光屋の酒だけを置いている店なので」。
とはいえ、この3軒は金沢を代表する老舗の超人気店。さすが〝おでん部長〟、要所はつかんでいる!
「この3軒だけに限りませんが、古くからある店はみんな小規模。20人から30人のお客様を相手に主人が酒、料理をすべて切り盛り。目が届く範囲の中で、おいしく食べさせるための店主の考え抜かれた動きは、ムダがなく、すごい! そこにまず驚いてほしいなぁ。適当な店でお金を使うなら、おでん屋へ。感動のレベルが違いますから」
ハシゴ酒におつきあいして、予想外だったのはおでん屋にいながら、おでんをそれほど注文しないこと!
「おでん以外に刺身が置いてある店、一品料理のおいしい店とおのおのにウリがあるのも、いい店の特徴で。それを見つけられると、さらにおでん屋通いが楽しくなります」。
初めて入る店の場合は、「常連さんが頼むものを聞いていればわかります。みんな同じものを狙っているから(笑)。なので、できれば常連客のいる平日に足を運んだほうが、カウンター観察もできますよね」と人気店の攻略法も。
せっかくですから酒の頼み方も黒田さんに聞きましょう。
「おでん屋ではきっちり1合出してくるというのも、酒好きとしては大事なことで(笑)。味のあるチロリで、湯煎で丁寧につけられた燗酒は最高! この3軒を比べても、店主の好む適温はそれぞれ違うのですが、店の味や空気感にちょうどあっている。繊細な感覚も、おでん屋で感じてもらいたいです」
1軒目「高砂」PM4時30分 「主人の所作に見惚れる。美意識が味のすみずみに!」
まずは刺身で冷や1合
「さしみ」は盛り合わせで2,500円~。3代目・青木幹夫さんの観察が楽しみで、本来はL字カウンターの角が定位置。
白味噌ベースの特製生姜ダレ
「卵、豆腐、つみれ」を共通で注文するのが黒田流。「豆腐でその店のこだわりがわかります」。金沢では珍しい関東風おでん。焼き豆腐300円、つみれ400円、玉子200円、すじ2本400円。
老舗に残る「どてやき」も金沢おでん文化の食遺産。豚肉を味噌でからめて焼いたものだが、「この店は胡椒のみのシンプルさ」。どてやき4本800円。燗酒は「加能山河(かのうさんが)」1合500円。
注文順は「さしみ」⇒〝黒田セット〟+「すじ」⇒「どてやき」
DATA「高砂」
たかさご
住所:石川県金沢市片町1-3-29
電話:076-231-1018
営業時間:16時~21時 ※おでんの提供がなくなり次第終了
休み:日曜・祝日
2軒目「長平」PM6時 「姉妹のつくる絶品大皿料理。お燗のつけ方も絶妙です」
2代目を姉妹で担う、用川(ようかわ)かよ子さん(右・姉)、伊藤悦子さん。常連客は大皿にある一品料理を楽しんだ後、おでんへ移行。黒田さん定番の「うなぎ肝」は近江町市場から届く。1本700円。
金沢のおでん種に欠かせない「牛すじ」600円。この店のは絶品。「美人姉妹のおでん愛が込められた、ふんわり優しい味がします」
よかったら、うちの酒を飲んでみてー
温めた「黒帯」1合600円を隣に居合わせたお客様にふるまう黒田さん。「話が弾むと、自社の酒をついすすめちゃう(笑)。和気あいあいのやりとりも、湯気を前にして横並びに座るおでん屋ならでは」
注文順は「うなぎ肝」⇒〝黒田セット〟+「牛すじ」
DATA「長平」
ちょうべい
住所:石川県金沢市下新町2-11
電話:076-221-3697
営業時間:17時30分~21時(L.O.)
休み:日曜・月曜
3軒目「若葉」PM8時 「金沢一の呼び声も。福光屋の近所にあって幸せ」
3代目・吉川政史さんを囲むコの字カウンターが人気の店。「みつば」350円、「シャキシャキ食感で麺のようです」と絶賛の「糸こんにゃく」200円、「茶めし」250円は必食。
座敷席からカウンター全景を眺めるのも好き
「この店はほぼおでんしかないので、直球勝負で飲みます!」。おでん屋の隠れ名物〝ポット酒〟。あらかじめ燗酒が入っていて、座敷席の団体客や飲みたい人にすぐ対応。中身は「福正宗 銀ラベル」500円。
豚肉を蒸し上げつつ、味噌で煮込む絶品「どて焼」2本500円。芸術的な吉川さんの手業を肴に飲むのが黒田さんの楽しみ。
注文順は黒田セット〟+「みつば」⇒「どて焼」⇒「茶めし」
DATA「若葉」
わかば
住所:石川県金沢市石引2-7-11
電話:076-231-1876
営業時間:17時~22時 ※おでんの提供がなくなり次第終了
休み:月曜・火曜
撮影/宮濱祐美子 構成/藤田 優
※本記事は雑誌『和樂(2024年2・3月号)』の転載です。掲載価格はすべて税込で、価格や営業時間などは変更される場合があります。お出かけの前にご確認ください。