春らしい好天に恵まれた4月19日、“時を超える価値”に思いを馳せるアートイベント「PERPETUAL MOMENT - 自然の中の時間」が東京都庭園美術館で開催。館長で建築家の妹島和世氏がイベントホストを務め、世界で活躍する現代アーティストがこの日のためだけに制作したアートインスタレーションを展示するなど、一日限りの贅沢な時間をレポートします。
庭園美術館の自然の中で味わうアートイベント
会場となったのは、朝香宮鳩彦王の邸宅として1933年に建築されたアールデコ様式の歴史ある建造物であり、緑豊かな庭園が調和した美術館として知られる東京都庭園美術館、西洋庭園。一歩足を踏み入れると、都会の真ん中とは思えない、広々とした豊かな自然が広がっています。足を進めると、まず目に飛び込んできたのは、鮮やかなイエローのパビリオン。この日のために、館長である妹島氏が制作したものだといいます。有機的で軽やかな設計は、西洋庭園の自然と美しく調和。自然と人が集まるような、開放感のある空間が完成していました。
“時間”を感じるインスタレーション
庭園手前側には、小牟田悠介氏による「未来」をテーマとしたインスタレーション。 ジグザグと折られた紙は、この西洋庭園の外周を(実寸で!)トレースしたといいます。蛇腹に折ることにより、チクタクと刻む時間を表現しながら、外周という掴みにくいものを近くに感じられるよう考えられているそうです。庭園の空間と作品を、ワープするかのように想像で行き来してみる。その繰り返しによって、漠然としたものを主体的に捉える力が鍛えられるかのように感じました。誰にとっても掴みきれない、「未来」という概念を、自由に自分のもとへ引き寄せて感じることと重ねた作品です。
庭園中央に目をやると、そこに佇んでいたのは不思議な造形物。有機的なオブジェを土台に、荘厳な鳥のモチーフが存在感を放っていました。こちらは名和晃平氏による「過去」をテーマとした彫刻作品です。
モチーフとなっている鳥は、孔雀。孔雀は古くから生命や精神の不滅を象徴し、朝香宮様もお庭で飼われていたといいます。止まり木のように見える部分は、名和氏を代表的する作品のひとつ、「Ether」。地面に落下する水滴の形を上下反転させ、ランダムに積み上げ形作られています。水やエネルギーの循環をテーマとするモチーフに、凛と佇む孔雀の姿。じっと見つめていると、朝香宮邸時代が浮かび上がってくるよう。永遠に色褪せることなく、現在と交わり続ける「過去」の存在を感じる作品でした。
今回お披露目のインスタレーション最後の作品となるのが、現代芸術活動チーム目[mé]によるこちらの作品。「現在」をテーマとした同作品、一見普段の西洋庭園の風景にしか見えず、どこに作品があるの?と思ってしまいそうですが、よくご覧ください。ベンチの足元が鏡に変化しているのです。
景色を景色のまま、足を踏み入れ近づこうと試みたこちらの作品。本来、景色は近づく毎に、森は木に、木は葉にと分解されてしまいますが、こうして鏡を通して近づけば、丸ごと味わうことができるのですね。刻一刻と変化する瞬間そのものを愛おしむ、「現在」にふさわしい作品でした。
卓越した技術に触れる、贅沢な時間
さらに今回、スペインの建築家エンリック・ミラージェス氏とベネデッタ・タリアブエ氏による家具も展示されました。こちらは、館長である妹島氏がぜひこのイベントでお披露目したいと、スペインから運んでいらした作品とのこと。ダンシングファニチャーと呼ばれる家具は、さまざまな仕掛けにより形状を変化させる、まるで生きているかのような作風が特徴です。
自由に触れることのできる展示だったため、来場者は思い思いに形を変化させ、その遊び心と卓越した技術に見惚れているようでした。
シンポジウムに、サウンド・インスタレーションも
お昼過ぎには、アートインスタレーションの制作背景について妹島和世氏と語るシンポジウム、そして原摩利彦氏によるサウンド・インスタレーションも開催されました。
チクとタクの間で刻まれる永続的な1秒を、自分自身の感性を通じて感じることのできるインスタレーションや展示の数々。刻々と移り変わる庭園美術館の豊かな自然に包まれて、特別な時間を過ごすことができました。
夢の世界へと誘う、ディナータイム
日が落ちると会場の様子は一転。庭園にパビリオンやアートインスタレーション浮かび上がり、その幻想的な雰囲気は、まるで夢の中のガーデンパーティのようです。
ディナーは、透明なハウス内で頂きました。煌めく光、テーブルに溢れるお花、人気シェフ・清水崇充氏によるお皿の上に森が現れるようなお料理の数々。素晴らしいワインと楽しいおしゃべりに、盛り上がりは最高潮に! いつしか、ここはどこ? 今はいつ? と、現実感が薄れる一方で、展示では新作ウォッチの革新的な機能、それを支える伝統的な時計製造技術の素晴らしさに感銘を受け、改めて「時」に思いを馳せる機会となりました。
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