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4,5月号2026.02.28発売

美の都・京都で出合う うるわし、工藝

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2026.04.06

江戸後期、春画界を席巻! 破天荒な絵師・英泉が描くジェンダーレス美男子が綺麗すぎる

渓斎英泉(けいさい えいせん/1791-1848)は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師。葛飾北斎(1760-1849)を慕いながらも独自の画風を確立、展開した。北斎も春画の名作を描いているが、春画の数においては文政から天保まで北斎をはるかに超える作品を、英泉は出版している。妖艶な女性描写とさまざまな趣向を凝らしているのが特徴。世界的な春画コレクターで大英博物館の春画展にも協力した、浦上満さんが所蔵する英泉の春画を見せてもらい、彼の魅力に迫る。

武士の家に生まれるも、流浪の果てに絵師となった男

まずは英泉のプロフィールを追ってみよう。世間で有名な英泉の妖艶な美人画…その作品世界が納得できるような、波瀾万丈な人生だったようだ。

▲渓斎英泉 色摺半紙本『枕文庫』/文政5年(1822)

英泉は1791年に生まれた。父は武士で、俳諧や茶の湯をたしなむ文化人でもあった。英泉自身も、本来であれば武士として安定した人生を送っていたかもしれない。

だが現実は厳しい。六歳で実母を失い、二十歳の頃には父と継母も相次いで亡くなる。家は貧しく、幼い妹たちを抱えながら生きていかなければならなかった。武士として水野家に仕えた時期もあったが、それも長くは続かず、絵で生きることを選んだのである。

生きた蝶を鍋に入れて食らう? 英泉の破天荒すぎる私生活

本人の自伝や周囲の証言には、常識外れとも言える逸話が次々と登場する。たとえば、版画の下絵を途中まで描いて突然姿を消す。版元が必死に探し回り、ようやく見つけたと思ったら、遊郭や酒場で「死んだように」泥酔していた、という話がある。

▲渓斎英泉 色摺半紙本『枕文庫』/文政5年(1822)

食生活も尋常ではない。毒があって恐れられていたフグを、生きたまま蝶や魚と一緒に鍋で煮て食べた、という記録まで残っている。まさに悪食家、命知らずだ。

また、羽織を引っかけ下駄履きのまま「ちょっとそこまで」と出かけたかと思えば、そのまま夜船に乗って房総の木更津まで行ってしまう。住所不定、放浪癖あり。常識的な社会人とは程遠い。

放蕩の果てに生まれた、英泉の春画

この放蕩無頼の生活こそが、英泉の絵に独特の色気を与えたのかもしれない。英泉は菊川英山のもとで浮世絵を学び、当初は師匠譲りの優雅で甘美な美人画を描いていた。しかしやがて作風は大きく変化する。張りつめた表情、強い目線。文政期に発表された大首絵のシリーズは、見る者を圧倒する情念をたたえている。生々しい欲望や、江戸の夜の匂いまで感じさせる絵が描かれた。

▲ 渓斎英泉 大判錦絵『市松屏風』(部分)/文化文政年間(1804〜1830)

春画の分野でも英泉は群を抜いていた。多色摺りの春画を数十点も制作し、その作画量は北斎を上回っている。とくに『枕文庫』は、江戸時代最大級の性指南書であり、十年をかけて完成させた大作だ。英泉は、きれいごとではない江戸を描いた絵師。欲望、迷い、夜の闇…怪しい魅力があふれる!

英泉が描くジェンダーレスなイケメンが美しすぎる!

ではいよいよ、浦上満さんが蒐集してきた英泉の春画を細かく見せていただこう。「春画は、どう見なさいという決まりはない。見る人それぞれが自由に反応すればいいのです。」世界的な春画コレクターとして知られる浦上さんは、そう言って微笑む。

▲渓斎英泉 大判錦絵『あぶな絵』/文政年間(1818~30)

長年にわたり膨大な作品を集めてきた彼の言葉は、実におおらかだ。その優しさで緊張がほぐれた筆者は、目の前で見る英泉の春画から予想外の特長を見つけた。それは、「男性の美しさ」だ!!!!

北斎と英泉の春画…男性の絵の違いは“ぼんやり眉毛”か、“シュッとした眉毛”か?

文化文政期に春画を精力的に描いていた葛飾北斎。タコと美女など、大胆な構図と圧倒的な画力で、世界的にも評価が高い。しかし、英泉の春画と見比べたとき、その違いは驚くほど鮮明だ。

▲北斎が春画で描く男性は目がぼーっとしていて、唇はカサカサしてそう!? 葛飾北斎 大判錦絵『東にしき』/文化9年(1812)頃

北斎の描く男性の顔は、眉毛が太く、ぼやっとした印象。どこか“現実の延長線上”にいるような存在感を持つ。中背中肉の普通の男が、前面に出ている。一方で英泉の男性像はどうか。

▲英泉の春画では、男性の目元は華やかでイケメン。男性の乱れた髪の毛、妖艶にくねくねと曲がる細い眉毛が色っぽい。渓斎英泉 色摺半紙本『春情指人形』地/天保9年頃(1838)

目力があり、鼻筋が通っていて綺麗。眉毛は細くて絶妙な表情をみせている。同じ春画でありながら、ここまで描く男性への美意識が違うのかと、思わず息をのむ。

アイライン、眉、口紅——中性的な男性の美を極める英泉の春画

英泉が描くジェンダーレス・イケメン春画は、とにかく顔立ちの描写が美しい。

▲渓斎英泉 大判錦絵『あぶな絵』/文政年間(1818~30)

くっきりと濃いアイライン。
細く整えられた眉。
女性と同じく、赤い口紅。
ときに乱れた色っぽい髪の毛。

春画といえば女性の絵に目が行きがちだが、英泉の春画はきれいな男性のオンパレードだ。たくましさよりも、しなやかさ。威圧感よりも、色気とはかなさがただよう。誇張された性器の絵をみるのは抵抗がある初心者の方にも英泉の春画はオススメ。英泉の春画なら、ジェンダーレスな美男子が“いたしてる”ときの顔を眺めるだけで楽しめるからだ。

取材協力/浦上蒼穹堂
参考文献/浮世絵名作選集 英泉(山田書院)・名物揃物浮世絵7国芳・英泉(鈴木重三)・別冊太陽 春画
アイキャッチ:渓斎英泉 大判錦絵『強引な男』(部分)/文化文政年間(1804〜1830)
すべての画像:浦上満 所蔵

葛飾北斎・渓斎英泉 艶くらべ ー歌舞伎町花盛りー新宿歌舞伎町春画展WA 開催

浦上さんが集めてきた春画コレクションで、北斎と英泉にフォーカスした展覧会が春に新宿歌舞伎町で開催されます。

会期: 2026年4月4日(土)~ 5月31日(日) ※会期中無休
前期: 4月4日(土)~ 4月30日(木)
後期: 5月1日(金)~ 5月31日(日)
※作品保護のため、一部展示替えを行います。

北斎の春画の名作《蛸と海女》出展決定!!
展示期間1:4月4日(土)~4月12日(日)
展示期間2:5月1日(金)~5月10日(日)

チケット情報(日付指定制)
前売り券(4月3日まで販売): 一般 1,900円 / 学生 1,300円
当日券: 一般 2,200円 / 学生 1,500円
チケット購入:https://www.smappa.net/shunga/ticket.html

本展は、日本が世界に誇る浮世絵師・葛飾北斎(1760-1849)と、その画風を慕いながらも独自の美意識を切り拓いた渓斎英泉(1791-1848)に焦点を当てた企画です。大胆かつ奔放な北斎と、退廃的で妖艶な英泉。影響を与え、影響を受けながらも、人間の欲望と生命力に対し、異なる眼差しを向けた二人の「艶」の競演をご堪能ください。

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給湯流茶道

きゅうとうりゅう・さどう。信長や秀吉が戦場で茶会をした歴史を再現!現代の戦場、オフィス給湯室で抹茶をたてる団体、2010年発足。道後温泉ストリップ劇場、ロンドンの弁護士事務所、廃線になる駅前で茶会をしたことも。サラリーマン視点で日本文化を再構築。現在は雅楽、狂言、詩吟などの公演も行っている。ぜひ遊びにきてください!
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※『和樂』2026年4・5月号 美術展カレンダーに誤りがありました。P.224で紹介しました、福岡県・久留米市美術館で開催中の「美の新地平ー石橋財団アーティゾン美術館のいま」の入館料は、正しくは一般1,500円となります。お詫びして訂正いたします。
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