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2026.07.10

戦後沖縄の文化サロンとして発展した名店「民芸酒場おもろ」へ行ってみた!

うちなーんちゅ(沖縄県民)が集う場から、開かれた酒場へ。4代目が新たな思いをもって壺屋通りに移転再開したこの店。沖縄民藝の聖地となった経緯から話は始まります。

「おもろ」の型染めののれん。

那覇市にある、知る人ぞ知る民藝の聖地

終戦から8年後の昭和28(1953)年。那覇市桜坂に開店した5~6人が座れば満席になる小さな酒場が「民芸酒場おもろ」の原点。

現在4代目を担う新垣亮(あらかきあきら)さんの祖父にあたる新垣盛市(せいいち)さんが初代主人で、妻のヨシ子さんが琉球家庭料理をふるまうというスタイルで始まりました。

開業当初の写真を見ると、バックカウンターには壺屋焼(つぼややき)の焼物がいくつか。
それが店の移転拡張のたび、どんどんと数が増えていったようですが、なぜ盛市さんが沖縄の民藝品を飾ることになったのかは「家族が面と向かって聞くことはなかったようです」と亮さんは残念そうに話します。

左/イギリスの陶芸家バーナード・リーチ夫妻と、益子焼(ましこやき)の濱田庄司。1960年代には、民藝運動に深くかかわった人々が訪れていた。右上/店でくつろぐ、沖縄で最初の人間国宝となった陶工の金城次郎。濱田庄司は益子に窯を築いた後も壺屋を訪れ、金城次郎と交流していた。右下/開店当初の店内風景。写真提供/「民芸酒場おもろ」

そもそも「おもろ」の名付け親は、画家の南風原朝光(はえばるちょうこう)。
朝光の兄の妻が名店「琉球料理 美榮(みえ)」の創業者・古波藏登美(こはぐらとみ)ということなので、盛市さんの趣向が、感度の高い人々と最初から共鳴していたのは確かでしょう。

ちなみに「おもろ」とは沖縄語で「想い・想う」の意味。12~17世紀に首里(しゅり)王府が収集し、編纂したといわれる沖縄最古の歌謡集「おもろそうし」が店名の由来になっています。

「みんなが力を合わせて立ち上がろう、という覇気があったことは確かですよね。おじいは、沖縄に対する愛がとても強かったと思います」と亮さん。

現在の店舗にて。カウンター席とテーブル席に分かれる。

当時は洋酒は免税がきくこともあり、飲むといったらウィスキー。
泡盛(あわもり)は「臭くて、貧乏人が飲む酒」と敬遠されていたところを、盛市さんは泡盛しか提供しなかったとか。

そう考えると、店のしつらえが県産の民藝品であることは当然だったのかも?

盛市さんの志の強さは、文化のつくり手のみならず、政治家や記者といった面々をも惹きつけ、夜な夜なこの店で「これからの沖縄をどう生きるか」といった思いが交換されていたのです。

初期の壺屋焼に盛りつけた琉球家庭料理の美しさ

現在の店舗は2023年に移転・再開。
ここから4代目を受け継いだ亮さんは、内装は初代のころの雰囲気に近づけたそうです。
さらに力を入れたのが、酒肴(しゅこう)や料理。

沖縄で最初の人間国宝となった陶工・金城次郎(きんじょうじろう)氏と交流のあった盛市さんは、次郎さんの作品はもちろんのこと、壺屋に窯があった時代のやちむんを数百枚にわたって所有していたとか。

左/料理はおまかせ6,000円程度(要予約)。その一例のクーブイリチー。右/県産マグロの刺身。

左/豆腐チャンプルー。右/スクガラス。料理の写真はいずれもおまかせの一例。

そのころのうつわに盛って映えるのは、やはり昔ながらの料理。
ということで、亮さんは宮廷料理や家庭料理のレシピを見直し、小皿に品よく盛りつけて提供することに。
肝心なお酒は、4代目からは古酒(くーすー=泡盛を熟成させたもの)一択に。

「からから(酒器)とちぶぐゎ(小さな猪口。極小の盃は貴重な古酒をなめるように味わうため)という沖縄伝統の酒器があるのだから、それを楽しんでもらいたくて」とのこと。

テーブルの上に並んだ酒器や小皿を眺めると、やちむんに古くから使われている彩飾が沖縄の料理と引き立て合うことがよくわかります。

最後に、先代は閉鎖的だったこの店を広く知ってもらいたいと方向転換したのはなぜ?

「初代が大事にしていた民藝の精神に反すると思いまして」と亮さん。

新しい文化の場がどう育つのか、楽しみです。

左/4代目主人の新垣亮さん。右/移転を祝して贈られた、からからとちぶぐゎを描いた金城次郎の寄せ書きが、現在の店ののれんに用いられている。

●民芸酒場おもろ DATA

住所:沖縄県那覇市壺屋1-6-23 知念ビル1F
電話:098-959-8358
営業時間:17時〜22時ごろ 
休み:不定休
公式サイト:https://www.mingeisakaba-omoro.com/
※要予約

※本記事は雑誌『和樂(2026年6・7月号)』の転載です。
※掲載している価格は、すべて税込価格です。
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和樂web編集部


撮影/長谷川 潤 構成/藤田 優、古里典子(和樂)
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