静嘉堂所蔵の全51件でたどる、河井寬次郎の作品に宿る美
柳宗悦や濱田庄司とともに「民藝」という言葉を生み出し、暮らしの中にとけこむやきものを手がけた寬次郎。今回展示される静嘉堂所蔵の寬次郎作品の大部分は、寬次郎が民藝運動の中心メンバーとして活動しはじめた昭和初期のものです。
本展では、初公開の2件を含む、静嘉堂所蔵の寬次郎作品全51件が初めて一挙に公開されます。「流し薬」や「流し描」をはじめ、多彩な技法を用いた作品には、寬次郎が意識した「用の美」が表れています。

李朝、丹波焼、瀬戸の石皿。静嘉堂で出会う「民藝」の器
日本伝世の茶道具や唐三彩、宋磁の名品で知られる静嘉堂。実は、「李朝」の名で親しまれる朝鮮王朝時代の陶磁器をはじめ、丹波焼や瀬戸焼、九州各地の民窯など、「民藝」の範疇にあるやきものも比較的多く所蔵しています。
会場には、これまで公開の機会が少なかった作品や未公開作も展示。寬次郎のやきものと朝鮮陶磁などの器形を見比べながら、素朴でおおらかな古陶磁の美と、その造形の面白さに触れられます。


東洋陶磁の名品に学ぶ、釉薬探究の軌跡

寬次郎は京都市陶磁器試験場に在籍していた時代、海外から輸入された専門書や図録を通して、中国陶磁を学んでいたと考えられています。そして、支援者・山岡千太郎から贈られた欧米の専門書を、親友の濱田庄司とともに読み、研究したことも伝えられています。
さらに、本展に関わる調査では、中国の古文献や、当時刊行されていた骨董関連の書籍にも目を通していたことが明らかに。こうした学びが作品にどう表れているのかも、見どころです。
本展では、唐三彩や宋磁の影響が見られる寬次郎作品と、静嘉堂が所蔵する南宋官窯(なんそうかんよう)や龍泉窯(りゅうせんよう)、鈞窯(きんよう)などの陶磁器が並びます。

なかでも注目したいのは、国宝《曜変天目(ようへんてんもく)(稲葉天目)》と、寬次郎自ら「曜変」と名づけた《曜変壺(ようへんつぼ)》《曜変櫛目盒子(ようへんくしめごうす)》の競演。共箱に「曜変」と記された寬次郎作品は、確認されている限りこの2点以外ありません。
国宝《曜変天目》は、黒い釉薬の表面に斑文が浮かび、そのまわりに青や黄色の光がきらめく宋代の茶碗です。「曜変」の名は、焼成中の変化を意味する「窯変」に由来し、星のような斑点や虹色の輝きから「曜」の字が当てられたと考えられています。
一方、寬次郎の2作品にも斑文や金属のような光沢が現れていますが、国宝のような光彩を再現しようとした形跡は見られません。制作当時、寬次郎は典型的な曜変天目を実際には見ていなかったと考えられるものの、図録やカタログから「曜変」の情報を得ていた可能性があります。
さらに当時は、「曜変」と「油滴」などの区分も現在ほど明確ではありませんでした。つまり、寬次郎が「曜変」と呼んだものは、今日いう曜変天目とは別のものだった可能性もあります。それでも、寬次郎の2作品に見られる斑文や金属光沢は、焼成による釉薬の変化から生まれたもの。そこには、京都市陶磁器試験場などで培った寬次郎の釉薬研究の成果が表れています。


会期中には、鷺珠江氏(河井寬次郎記念館学芸員)と梶山博史氏(大阪市立東洋陶磁美術館学芸課長代理)による対談や、担当学芸員によるスライドトークなども開催されます。
民藝のやきものから東洋陶磁の名品まで。時代も土地も異なる作品を見比べながら、寬次郎の創作を支えた学びと探究に触れてみてはいかがでしょうか。
※掲載作品はすべて静嘉堂文庫美術館蔵
民藝SHOCK!!―没後60年 静嘉堂の河井寬次郎
会期:2026年9月5日(土)~11月8日(日)
※会期中、一部作品の展示替えあり
会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
住所:東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1階
開館時間:10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
※第4水曜日の9月23日、10月28日は20:00まで、11月6日、11月7日は19:00まで開館
休館日:毎週月曜日、9月24日、10月13日(ただし9月21日、10月12日は開館)
入館料:一般1,500円/大高生1,000円/中学生以下無料
URL:https://www.seikado.or.jp/
トップ画像/《流し描鉢》 河井寬次郎 昭和6年(1931)頃 静嘉堂文庫美術館蔵

