軽井沢千住博美術館 ~12/25
「シンウォーターフォール 千住博が山水図で描く時空の記憶、未来と希望」
私が担当します
軽井沢千住博美術館キュレトリアルディレクター 加藤 淳さん

滝も、崖も、森も。一貫して描き続けてきた「山水図」の世界が広がります(加藤さん)
日本画家・千住博(せんじゅひろし)は、東京、京都、N.Y.を拠点に制作活動を続け、ヴェネツィアビエンナーレ絵画部門で東洋人として初めて名誉賞を受賞。
その初期作品から最新作までを収蔵・展示するのが、長野の軽井沢千住博美術館です。2026年は開館15周年の記念の年。
「この15年は、千住博の作品が大きく進化、発展してきた時期でもありました。最も顕著なのが、代表作である滝、『ウォーターフォール』シリーズです。初出は1994年で、そのころは実景に近い形で滝が描かれています。それが、翌年、第46回ヴェネツィアビエンナーレ出品作では、落水以外の背景がすべて省略されて、一気に抽象化が進行。色彩も白と黒のモノトーンになりました。
さらにその後、滝は『フォーリングカラー』として、カラフルに変化。そして、2021年に制作が開始された『ウォーターフォール・オン・カラーズ』へと発展していきます。今回は、その最新版、本当につい最近完成したばかりの『ウォーターフォール・オン・カラーズ 白糸の滝』を展示します」
鮮やかな6色の背景で描かれた新作は、まるで抽象画のよう。でも、確かにこれは「滝」の姿!
一方、2009年に始まったもうひとつの代表作である『崖』シリーズは具象化していきます。
「それぞれ、表現のベクトルは異なるように見えて、千住の作画の方針は一貫しています。それは『山水図である』ということ。作家の心にある理想化された自然、創造された景色が描かれているのです。そして、この『山水図』というキーワードは、軽井沢千住博美術館の空間そのものにも通じていると、私は思っています。
建築家・西沢立衛(にしざわりゅうえ)氏によって、自然の地形を生かして設計された建物は、仕切りのない一室構造。床には起伏があり、外光も入ってきます。“立体”山水図での特別な鑑賞体験をお楽しみください」
Curator’s Eye
シリーズ初期の代表作。モノクロームの滝
滝壺からのミストまで感じられる

「滝シリーズは1990年代後半から抽象化していきました。モノトーンで、シンプルな形体として描かれていた滝が、その後、カラーの滝へと発展していく、その軌跡を、展覧会ではご覧いただけます。千住が“伝統と革新”の画家であること、そしてその“革新”は今なお続いていることが、おわかりいただけると思います」
Curator’s Eye
伝統的な滝のモチーフが革新的なアートに!
これぞ千住流山水図!

「背景が異なる6枚のパネル上に落水が描かれた作品。2025年秋に、千住自身が軽井沢にある白糸の滝を訪れて見たミニマルな滝の流れと陽光の気配に着想を得て描かれました。この6色は、場所を入れ替えても成立する考え抜かれた配色。本展では現代アート的なパネル作品として展示し、将来は屛風仕立てに表具される予定です」
Curator’s Eye
現実にはない光景。なのになぜか懐かしい
だれの心にもある原風景に

「都会育ちで、画業の初期にはビル群をモチーフにしていた千住にとって、森シリーズは本格的な山水図制作への最初の取り組みだったといえます。明と暗、朝と夜の時間をひとつの画面に存在させることで、その中間、すなわち“中庸”を感じさせる。観る人の心にスッと入っていく作品」
Curator’s Eye
手で揉んだ後の紙に描く。日本画の手法も革新中
熱い! マグマのエネルギー!

「千住の崖シリーズは、描くための和紙を揉(も)む“揉み紙”という手法で制作されています。実際に作品の前に立つと、紙の凹凸の揉み目に絵具が堆積(たいせき)することで岩のような表情が生まれていることがわかります。『浅間山』はその真骨頂ともいえる崖シリーズの代表作。火口の下にあるマグマの存在、地球のエネルギーまで感じられます」
作品をモチーフにしたグッズも人気

軽井沢千住博美術館 DATA(和樂提携美術館)
住所:長野県北佐久郡軽井沢町長倉815
電話:0267-46-6565
開館時間:9:30~17:00 ※入館は16:30まで。
休館日:火曜日(祝日・G.W.・7~9月は無休)。12月26日~翌2月末日(冬期休館)
公式サイト:https://www.senju-museum.jp/
◆『和樂』「全国厳選!美術展カレンダー」とは?
『和樂』本誌では、発売期間中に全国で行われている展覧会を、作品情報とともに紹介しています。掲載しているのは全国の著名な美術館・博物館。お目当ての展覧会を見に、また旅先での美術館巡りなどで、ぜひともご活用いただきたい【和樂 提携美術館】の優待券を毎号お届けしています! 詳細は本誌でご確認ください。
【和樂 提携美術館】
山形「土門拳写真美術館」、茨城「笠間日動美術館」「徳川ミュージアム」、群馬「原美術館 ARC」、千葉「千葉市美術館」、東京「永青文庫」「太田記念美術館」「菊池寛実記念 智美術館 ※2026年秋(予定)まで展示室修繕のため休館」「五島美術館」「サントリー美術館」「泉屋博古館東京」「東京ステーションギャラリー」「パナソニック汐留美術館」「三井記念美術館」「三菱一号館美術館」「森美術館」「山種美術館」、神奈川「岡田美術館」「川崎浮世絵ギャラリー ~斎藤文夫コレクション~」「ポーラ美術館」、長野「軽井沢千住博美術館」「サンリツ服部美術館」「日本浮世絵博物館」、静岡「MOA美術館」、京都「泉屋博古館」「福田美術館」「細見美術館」、奈良「松伯美術館」「大和文華館」、和歌山「高野山霊宝館」、兵庫「芦屋市立美術博物館」、島根「足立美術館」(都道府県別・五十音順)
※本記事は雑誌『和樂(2026年4・5月号)』の転載です。

