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春が近づくと気持ちが弾む。次第に春山はピンクに染まり、ふくらんで見えるという。
春分 しゅんぶん
ことさら寒い雲ケ畑だから
春の兆しに心が躍る
村田さんの工房がある雲ケ畑にようやく春が到来。冬の間は積雪で山に入れなかったけれど、3月中旬になると、外にコーヒーやお弁当を持ち出して楽しむこともあるそう。下の鉢は、江戸時代の名工・尾形乾山(けんざん)の同型の写し。村田さんは乾山の上絵付け(うわえつけ)とは違う技法、織部(おりべ)の釉薬(ゆうやく)などで趣を生み出しています。
穀雨 こくう
たおやかな春の高揚感を
辰砂というやきものに込めて
穀雨とは「百穀(ひゃっこく)を潤す春雨」という意味で、春の季節最後の二十四節気です(4月20日ごろ)。山中の桜は、徐々に葉桜へと代わっていきます。そのころの花といえば牡丹。「赤の辰砂(しんしゃ)は色を安定させるのが難しい釉薬」と村田さん。これは、花弁に辰砂釉がフワッと広がり、独特な華やかさを感じさせます。
村田 森 むらた しん
1970年京都生まれ。1993年に京都精華大学陶芸科を、翌年に同研究科を卒業。荒木義隆氏に師事後に独立。2003年に京都・雲ケ畑に築窯し、年間10回以上個展を開いてきた人気作家でありながら、2016年に新作の発表を停止。2020年に、現代美術家の村上隆氏とともに陶芸専門店「となりの村田」(https://tonarinomurata.com/)を立ち上げ、二十四節気をテーマにした392点のうつわの受注生産を始める。
撮影/篠原宏明、小池紀行 構成/植田伊津子、後藤淳美(本誌)
※本記事は雑誌『和樂(2023年2・3月号)』の転載です。
※表示価格はすべて税込価格です(「となりの村田」https://tonarinomurata.com/)。
※掲載商品には1点ものや数量が限られているものがあり、取材時期から時間がたっていることから、在庫がない場合もあります。