CATEGORY

最新号紹介

2,3月号2024.12.27発売

片岡仁左衛門×坂東玉三郎 奇跡の「国宝コンビ」のすべて

閉じる
連載

Fashion&きもの

2025.01.24

大阪・黒門市場で際立つお買い物ファッション【竹本織太夫 着こなしの美学】8

竹本織太夫さんのプライベートファッションをご紹介するこちらの連載! 文楽の太夫として床の上で語られる姿とは、また印象が違う。とってもおしゃれ! と好評をいただいて“オリ”ます。2025年の最初は、大阪・黒門市場で織太夫さんのお買い物に同行させていただきました。

▼文楽への真摯な思いが伝わる【文楽のすゝめ 四季オリオリ】最新回は、コチラ

200年の歴史がある黒門市場

大阪市の中心地、ミナミにある商店街・黒門市場。かつて市場の付近にあったお寺の山門が黒かったことから、「黒門市場」と呼ばれるようになったそうです。全長約580メートルのアーケード下には約150店舗が並び、多くの人で賑わっています。文政5(1822)年頃、毎朝魚商人が集まり魚の売買を始めたのが起源と言われ、200年もの歴史がある市場です。

国立文楽劇場から黒門市場までは徒歩約5、6分の近さなので、織太夫さんは公演やお稽古の合間によく立ち寄られているそうです。

見慣れない大きな籠を持って現れた織太夫さんに、「これは何という籠ですか?」とお尋ねすると、「市場籠(いちばかご)」だと教えていただきました。古くから食のプロたちの買い出し用の籠として、使用されてきたもののよう。「これだと、大きいので買ったものが重ならずに、きれいに入れられて便利なんですよ」。市場籠を下げた織太夫さんは、黒門の提灯の下でオーラを放っておられました! いざお買い物へ!!

織太夫さんが通われているお店が色々!

まず最初に訪れたのは、黒門市場の入り口にある果物屋『松本商店』です。織太夫さんは後輩の技芸員(ぎげいいん)の方たちに、お手製のジャムをプレゼントされる様子を、Xで公開されているのがファンの間で話題です。その材料となる果物は、全てこちらの『松本商店』の物なのだそう。「昨年はいちじくや、いちごをよく購入されていましたね」とお店のご主人に聞きました。この日は、朝食にいつも食べられているキウイやレモンを購入して市場籠の中へ。

続いては、創業明治30年の老舗店『つけもの処・伊勢屋商店』へ。こちらのお店で購入された、べったら漬けや浅漬けなどの写真も、Xでよく公開されています。お店の方とは阿吽の呼吸で、慣れた感じでささっと買われているのが印象的。気心の知れたお店なのだと伝わってきます。

好物の赤かぶらのふすま漬けを購入されて、市場籠の中へとしまわれました。


師匠や、歴代の綱太夫のお墓にお供えするお花は『花とみ』でお願いされるなど、馴染みのお店はまだまだある様子です。

今年もやります!恒例・編集長のファッション解説!

昨年の連載スタート時より、織太夫さんの唯一無二のファッションに、驚きのリアクションをくりかえしてきた『和樂web』鈴木 深編集長。新年を飾るのは大阪・黒門市場でのお買い物コーデです。さて編集長の反応や、いかに!?

ファッション解説・鈴木 深

「勝手にファッション解説」、今回もやらせていただきます。いや~、今回はヤバイですね~。スゴイですね~。これまでのヤバさとは次元が全く違います。今までの織太夫さんのファッションを“ド変態スタイル”とするならば、今回はまるで地球に墜ちてきた“エイリアン(おりアン)スタイル”です。もはやアナザーワールドの住人の着こなし!

ヤバ~イ匂いがプンプンするこのセットアップは、「ナイロンキルトダウンジャケット」と「ナイロンキルトダウントラウザー」。どうやら軍もののナイロン素材でダウンを内蔵する、非常に暖かな(月にも行けそうな)逸品。織太夫さん特注の、もちろん世界で1着だけのこのセットアップは、名付けるならば「エイリアン(おりアン)スーツ」とでも言っておきましょうか。

竹本織太夫さん提供

セットアップの内側にダウンを固定するために施されたダイヤモンドステッチは大きめ3インチ角のド迫力で、なんだかケンカが強そうな風情です(笑)。トラウザーの左右の角形ポケットは非常に大きく、武器でも隠してませんか?とツッコミをいれたくなります。見た目のインパクト以上に、機能性がバツグンのこのスーツ。ボリュームたっぷりのダウンが全身を暖かく守ってくれます。キルティングジャケットの首元と手首のリブは、「C‐2ベスト」という米軍が超高度で戦闘機に乗る時に着用するニットベストのリブ素材を採用。手首や首元の暖かさも抜かりありません。


あわせたマウンテンブーツは、軽くて丈夫なダナーライト。もともとは森林伐採職人のためのタフなブーツですが、ブーツのレースはオリジナルの黒ではなく、織太夫さん好みのブルー系にエレガントにアレンジされています。中に着ているサーマル・ニットは、「U.S.ARMY MILITARY THERMALSHIRT」ですが、この特注ジャケットの着丈に合わせてかなり短めにカットされています。われらが太夫は「ジャケットの下からニットがはみ出る」なんてだらしない着こなしは絶対に許しません! この丈短ニットは、ひたすらこのジャケットを着るためだけに存在するアイテムなんです。

そして手持ちの大きめバッグは、まさかの「市場籠(いちばかご)」!!よくお鮨やさんが早朝に魚河岸へ食材を買いに行くときに使う、竹素材の編み込みカゴバッグです。太夫いわく「この籠は、買った物をおりまげず重ねすぎず持ち運べて、食材を痛めず、とっても便利❤」とのこと。織さま、まさかこのかっこうで野菜とか買いに行ってたのか~(爆笑)。

竹本織太夫さん提供

このエイリアン(おりアン)スーツを身にまとい、さらにスーツと同色のオリ(織)ーブカラーのニットグローブとマフラーで完全防備した織太夫さんは、六甲おろしをものともせず、チャリでビュンビュン飛ばす模様。もしもそんな太夫を見かけたら、絶対近づかずとにかく道を空けましょう。まんがいち接触して市場籠の中の大事な食材を傷つけたら大変です。

ちなみにこのようなスーツは、エイリアン(おりアン)しか着こなせません。少なくともフツーの地球の住人は、絶対マネしてはいけません。

取材・文/瓦谷登貴子 取材協力/松本商店、伊勢屋商店

竹本織太夫さん情報

Spotify podcast『文楽のすゝめ オリもオリとて』
X文楽のすゝめ official

Share

竹本織太夫

竹本織太夫(たけもと おりたゆう)人形浄瑠璃文楽 太夫。1975年生まれ。大阪市出身。大伯父は四代目鶴澤清六。祖父は二代目鶴澤道八。伯父は鶴澤清治、実弟は鶴澤清馗。1983年、8歳で豊竹咲太夫に入門。初代豊竹咲甫太夫を名乗る。1986年、10歳で国立文楽劇場小ホールにて初舞台。2018年六代目竹本織太夫を襲名。実業之日本社から『文楽のすゝめ』シリーズを3冊既刊。NHK Eテレの『にほんごであそぼ』に2005年からレギュラー出演するなど多方面で活躍。国立劇場文楽賞文楽優秀賞等受賞歴多数。
おすすめの記事

マスタード色のジャケットに込めた思い【竹本織太夫 着こなしの美学】2

連載 竹本織太夫

ビリケンさんとは?大阪・通天閣で愛される神様の意外なルーツ

瓦谷登貴子

大阪・法善寺横丁は馴染みのエリア。風情ある石畳に映えるデニムコーデ【竹本織太夫 着こなしの美学】6

連載 竹本織太夫

鉄のように強い意志を「藍」に込めて…【編集長の今日のNAVY】

和樂web編集部

人気記事ランキング

最新号紹介

2,3月号2024.12.27発売

片岡仁左衛門×坂東玉三郎 奇跡の「国宝コンビ」のすべて

※和樂本誌ならびに和樂webに関するお問い合わせはこちら
※小学館が雑誌『和樂』およびWEBサイト『和樂web』にて運営しているInstagramの公式アカウントは「@warakumagazine」のみになります。
和樂webのロゴや名称、公式アカウントの投稿を無断使用しプレゼント企画などを行っている類似アカウントがございますが、弊社とは一切関係ないのでご注意ください。
類似アカウントから不審なDM(プレゼント当選告知)などを受け取った際は、記載されたURLにはアクセスせずDM自体を削除していただくようお願いいたします。
また被害防止のため、同アカウントのブロックをお願いいたします。

関連メディア