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2024.09.05

まるでハイジュエリーのジオラマ! 愛らしい動物たちが遊ぶ花々が彩る宝石の森へ ディオール「ディオラマ」

「ディオール」は今年5月、最新ハイジュエリーコレクションを発表。その第1章「ディオラマ」の、絵画を思わせる詩情豊かな世界が、比類なきサヴォアフェールによって夢のように表現されました。愛らしい動物たちが、私たちを宝石の森へと誘います。

宝石の輝きに彩られた「トワル ドゥ ジュイ」の世界

「ディオール ファイン ジュエリー」クリエイティブ ディレクターのヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌは、宝飾界で20年以上にわたり注目され続ける稀代のジュエリーデザイナーです。彼女の想像を超える斬新なクリエイションは、いつも私たちを驚かせ、魅了してきました。

そのハイジュエリーコレクションの多くは、これまでメゾンの創設者であるクリスチャン・ディオールの人生とクチュールの作品が着想源でした。しかし、今年5月に発表されたハイジュエリーコレクション『ディオラマ&ディオリガミ』では、彼が愛した世界をさらに探究し、独創的なデザインへと昇華させています。

その第1章『ディオラマ』は、フランスのアール・ド・ヴィーヴル(暮らしの美学)の伝統を象徴するファブリック「トワル ドゥ ジュイ」からインスピレーションを得ています。この織物は18世紀のフランスで生まれ、動植物や人を意匠化したロココ調の模様が、室内装飾用の生地として人気を博しました。なかでも田園風景のデザインは、王妃マリー・アントワネットが好んだことで知られています。

そして、「トワル ドゥ ジュイ」はメゾンとのゆかりも深く、〝ディオール〟初のブティックの装飾にも用いられました。ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌは、その素朴な世界を「トワル ドゥ ジュイ」に倣い、ほぼ単色で表現。創設者の愛したミリー・ラ・フォレの森を散策し、そこに暮らす動物たちを美しい景色とともにミニチュア化し、ジオラマのようなハイジュエリーをつくり上げたのです。

鮮麗な宝石の森で遊ぶ仔鹿やキツネ。木の上にはふくろうが現れ、湖には白鳥が舞い降ります。動物たちの愛らしい姿は、様々な宝飾技巧を駆使することで表現されました。そのなかでも注目すべきは、宝石に彫刻を施す「グリプティック」と金属に彩色する「ラッカー」の職人技でしょう。そのほかにも樹皮をリアルに再現する金工技、多彩な石留めの技巧も使われました。その詩情豊かな美しさは、私たちをクリスチャン・ディオールが生涯愛した豊かな森へと誘います。

白鳥が舞い降りる冬の湖を繊細な色彩と細工で描いて

寒色系のカラーストーンと雪のように煌めくダイヤモンドで表現された冬の森の神秘的な情景。マザーオブパールの湖には、白鳥の優美な姿を見つけることができる。中央の透明感にあふれたサファイアは、夢の世界のシンボルのよう。「ディオラマ」ブレスット[サファイア計10.06ct(センター4.26ct)×ダイヤモンド計11.66ct×ターコイズ計1.81ct×MOP×ブルー&ブラックラッカー×YG×PG]参考価格¥175,000,000(クリスチャン ディオール〈ディオール ファイン ジュエリー〉)

ジオラマのように立体的でドラマティックな景色

同系色のカラーコンビネーションが特徴でもある本コレクション。この作品はブルー系の宝石でまとめ、サファイアとターコイズを使用。木や枝には彫金技による「スティップル(点描法)」仕上げが施され、樹皮までもリアルに再現。「ディオラマ」ネックレス[サファイア計23.75ct(センター13.15ct)×ダイヤモンド計27.61ct×ターコイズ計4.35ct×MOP×ブルー&ブラックラッカー×YG×PG]参考価格¥500,000,000(クリスチャン ディオール〈ディオール ファイン ジュエリー〉)

桜色から真紅に変化する艶やかな森の色彩を纏って

可憐なピンク色から艶やかな真紅までの宝石を用いた、ドラマティックなカラーコンビネーション。ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌの色彩における非凡なセンスと独自の美意識を感じさせる。木の上に佇むふくろうと葉のモチーフには、ラッカーによって繊細な彩色が施された。「ディオラマ」ブレスレット[ルビー計6.75ct(センター2.08ct)×ピンクサファイア計3.81ct×ダイヤモンド計1.69ct×アコヤ真珠×レッド&ブラック&グレーラッカー×PG]参考価格¥120,000,000・同リング[ルビー計7.97ct(センター4.87ct)×ピンクサファイア計2.68ct×ダイヤモンド計1.91ct×アコヤ真珠×PG]参考価格¥290,000,000(クリスチャン ディオール〈ディオール ファイン ジュエリー〉)

物語の挿絵を思わせるブレスレットの詩的な意匠

まさに「トワル ドゥ ジュイ」を思わせる単色で表現された世界。デザインの段階で計算された色の濃淡、輝きの強弱がモチーフに立体感と生き生きとした印象をもたらす。仔鹿と草の彩色はラッカーによるもの。鮮明なグリーンがコロンビア産のエメラルドと共鳴し、絵画のような美しさに。「ディオラマ」ブレスレット[エメラルド計4.98ct(センター2.42ct)×ツァボライト計6.73ct×デマントイドガーネット計2.31ct×ダイヤモンド計5.00ct×グリーン&ブラックラッカー×YG]参考価格¥140,000,000(クリスチャン ディオール〈ディオール ファイン ジュエリー〉)

夜の森で戯れる白狐たちの愛らしくも神秘的な姿

夜空を思わせるブルーの光彩は、サファイアとラッカーによるもの。枝は樹皮を模した「スティップル」仕上げ。ダイヤモンドの輝きを纏った狐たちが、夜の森に浮かび上がる。「ディオラマ」ネックレス[サファイア計31.22ct(センター11.02ct)×ダイヤモンド計16.38ct×ブルー&ブラックラッカー×PT×PG]参考価格¥395,000,000(クリスチャン ディオール〈ディオール ファイン ジュエリー〉)

彫金とジェムセッティングの職人技が生む幻想の世界

ゴールドの枝に高低差をつけたサファイアの葉が煌めく。ラッカーはサファイアの深く鮮明な色を忠実に模したブルー。幾重にも塗り重ねて同じ色に仕上げられた。イヤリングは遊び心を感じるアシメトリーのデザイン。「ディオラマ」イヤリング[サファイア計14.56ct×ダイヤモンド計1.55ct×ブルー&ブラックラッカー×PT×PG]参考価格¥100,000,000・同リング[サファイア計11.36ct(センター6.48ct)×ダイヤモンド計1.76ct×ブルー&ブラックラッカー×PT×PG]参考価格¥115,000,000(クリスチャン ディオール〈ディオール ファイン ジュエリー〉)

動植物に生命を吹き込んだグリプティック、彫金、ラッカー、エナメルの技法

本コレクションでは、動植物の生き生きとした姿を表現するために様々な宝飾技巧が用いられました。なかでも動物のモチーフには、グリプティック(宝石を彫刻する技巧)や金細工の伝統技が細部に使われています。形づくられたモチーフはラッカーやロンドボス(金属像の表面に施すエナメル技法)によってリアルに彩色され、まさに生命を得たかのように…。また、花のモチーフには宝石のカットに合わせて多彩なセッティング技術が駆使されました。このコレクションにおいては、宝石を留める爪さえもデザインの大切な一部になっているのです。

左/グリプティックによる表情豊かなウサギのモチーフ。宝石はクリソプレーズ。 右/花のモチーフは彫金技によるもの。宝石をセットする前の、麻紐を用いた磨きの工程。

お問い合わせ先/クリスチャン ディオール 0120・02・1947

撮影/小野祐次 コーディネート/鈴木春恵

※文中のPTはプラチナ、YGはイエローゴールド、PGはピンクゴールド、MOPはマザーオブパール、ctはカラットを表します
※価格表記はすべて税込み価格です
※本記事は『和樂』2024年10,11月号別冊付録の転載です
※価格は2024年9月1日時点のものです

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福田 詞子(英国宝石学協会 FGA)

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