大徳寺 聚光院
創建450年記念特別公開
2016年3月1日~2017年3月26日
京都紫野・大徳寺の塔頭(たっちゅう)「聚光院(じゅこういん)」は、千利休の菩提寺として、また日本美術史上の最高の絵師と称えられる狩野永徳(かのうえいとく)が父・松栄(しょうえい)とともに描いた障壁画によって、茶人や美術愛好家の憧れを一身に集めている名刹です。
「聚光院」は永禄9(1566)年、三好義継が戦国時代に名を馳せた武将である父・長慶の菩提を弔うため、大徳寺第107世住職・笑嶺宗訢(しょうれいそうきん)和尚を開祖として創建されました。その後、笑嶺和尚に参禅していた千利休が聚光院をみずからの菩提所としたことから、表千家・裏千家・武者小路千家の三千家代々の墓所となりました。
写真/「聚光院」本堂。狩野松栄・永徳親子が手がけた障壁画がこの中に!
ぜんぶホンモノ! ぜんぶ永徳の直筆!
今年2016年は、創建450年を迎える節目の年。聚光院ではかつてないスケールの特別公開がはじまっています。その最大の目玉が、狩野永徳が父の松栄とともに手がけた障壁画46面の実物が公開されること。これは日本美術ファンにとって、またとない機会といっていいでしょう。
狩野永徳と聞いてもピンとこない人のために、永徳がどれほどすごい絵師だったのかについて、ちょっとご説明します。
日本美術のスーパースター・狩野永徳!
桃山時代から江戸時代にかけて、城や寺社の障壁画など美術装飾を一手に引き受けていた「狩野派」という絵師の派閥がありました。その初代は室町時代に活躍した狩野正信で、元信、松栄へと親から子へ派閥は受け継がれていくに従って、絵師集団の組織は強固になり、勢力をどんどん広げていきました。
永徳は天文12(1543)年に生まれた松栄の子で、幼いころから飛び抜けた絵の才能を発揮していました。やがて、障壁画などの大画面にダイナミックな構図で絢爛豪華かつ勇壮な絵を描くことにおいて右に出るもののない絵師となっていた永徳に父・松栄は、狩野派の長の座を譲ってしまいます。
若くして狩野派のリーダーとなった永徳。その絵は、安土桃山時代の天下人、織田信長、豊臣秀吉の好みに合っていて、大いに喜ばれます。永徳は当時最重要の建築プロジェクトだった安土城や聚楽第、大坂城の障壁画をことごとく担当し、まさに一世を風靡する勢いでした。しかし、天正18年(1590)年、東福寺法堂(はっとう)の天井画『龍図』の制作中に病に倒れた永徳は、満47歳で息を引き取ったのです。
永徳の作品は、『洛中洛外図屏風』『唐獅子図屏風』『檜図屏風』などが今に伝えられていますが、多くは安土城や聚楽第、大坂城とともに焼失。日本美術史上最高の絵師と称えられながら、目にすることができる作品は非常に少ないのです。
若き永徳と父・松栄の美の結晶「聚光院」国宝障壁画46面!
そんな永徳が父・松栄とともに手がけた障壁画が残されているのが「聚光院」です。本堂内46面の襖絵はすべて国宝! 中でも『花鳥図』と『琴棋書画図』は永徳24歳のころの作とされ、その腕はまさに天才的。現存作品が少ない永徳の絵が、これほどたくさん残されているのも「聚光院」のほかにありません。
写真/「聚光院」本堂室中には狩野永徳が24歳のころに手がけたとされる『花鳥図」が。
「聚光院」は、今年創建450年を迎えることから、3月1日から約1年間にわたって、かつてないスケールと内容の特別公開が行われています。
それはなんと、修復に際して京都国立博物館に寄託されていた国宝障壁画46面が里帰りして、修復後初めて一挙公開されるのです!! これまで高精細複製画がはめられていたところに、永徳と松栄の筆の運びまで見て取ることができる直筆の襖絵が入り、間近で見ることができるのですから、これほど贅沢なことはありません。
永徳の大胆さと繊細さが同居した障壁画『花鳥図』。
檀那の間に描かれた永徳の『琴棋書画図』。躍動感に溢れたダイナミックな筆使いだが、琴や書などをたしなむ賢人たちの表情やしぐさは細やかに描かれている。
永徳の父・狩野松栄が描いた『瀟湘八景図』。同じく松栄の『竹虎遊猿図』。永徳にくらべるとその画風は繊細で優しい。
見どころはほかにもたくさん!
また、2013年の書院落慶に合わせて奉納された日本画家・千住博さんの障壁画『滝』が今回、初めて一般公開されるほか、表千家7代如心斎が千利休150回忌に寄進したとされる重要文化財の茶室「閑隠席」が公開されるなど、聚光院はまさに「初」と「特別」づくしの1年。この機会を逃すと、次は望めないほど貴重な特別公開を、ぜひお見逃しなく!
千住博さんの障壁画『滝』が初公開
2013年に落慶した書院に奉納された障壁画。千住博さんは「時の流れを象徴するモチーフ」として鮮やかな青に白い滝を描いた。
利休好みの「閑隠席」もこの機会に!
茶室「閑隠席」(重要文化財)。表千家7代如心斎が、千利休150回忌の際に寄進したと伝わる三畳の茶室。如心斎が利休の目指したものを忠実に表したものと言われ、素朴な中に禅の厳しさが感じられる。
拝観のご案内
特別公開期間
2016年3月1日(火)~2017年3月26日(日)
公開内容
本堂(重文)、狩野永徳筆『花鳥図』『琴棋書画図』・狩野松栄筆『蓮池藻魚図』『瀟湘八景図』『竹虎遊猿図』(すべて国宝)、方丈(本堂)、庭園「百積の庭」(名勝)、茶室「閑隠席」「枡床席」(ともに重文)、千住博筆 障壁画『滝』
拝観時間
8時45分(受付開始)~16時(最終受付) ※15分ごと、あるいは30分ごとにスタッフの誘導と解説とともに拝観(約40分間)。拝観案内1回の定員15名。★予約優先:京都春秋事務局WEBサイト内にある拝観予約カレンダーから予約可能)。
拝観休止日
3月9・19・27・28日、4月27・28日、5月21・22・27・28日、6月10・11・18・19・27・28日、7月4・27・28日、8月8・9・10・27・28日、9月5・6・7・11・27・28日、10月3・4・13・14・27・28日、11月13・21・22・27・28・29日、12月9・10・27~31日 2017年1月1~4・7・14・27・28日、2月2・27・28日、3月9日 ※暴風警報や大雨警報、地震など危険と判断した際は、事前の予告なく拝観休止となります。
拝観料
2,000円
聚光院 京都府京都市北区大徳寺町58 (京都春秋事務局)