今回解説するのは、尼御台(あまみだい=北条政子)の妹、阿波局(あわのつぼね)!! NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では実衣(みい)と呼ばれている。
そして大河ドラマでは北条義時の妹なのか……。実際の生まれ年はわからんけれど、『曽我物語(そが ものがたり)』では、尼御台の3つ下という設定だったので、義時の3つ上の姉という事になる。
おっと、自己紹介が遅れたな。鎌倉御家人・三浦胤義(たねよし)が語る! 令和4(2022)年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』予習シリーズ! オレが何者かは第1回参照なッ!
阿波局ってどんな人?
昔のオナゴの名前は残りにくいとは、大姫の記事の時にも話したが、阿波局ももちろん固有名詞ではない。「〇〇局(つぼね)」とは、宮中や将軍の家に仕えている女官の中でも、重要な地位についている人に対する敬称だ。
阿波局の夫は、頼朝様の異母弟の阿野全成(あの ぜんじょう)殿。頼朝様が挙兵した後、最初に馳せ参じた兄弟だ。その時、頼朝様は泣いて喜び、のちに阿波局との結婚を取り持ったのだ。
阿波局は、頼朝様と尼御台の次男である実朝(さねとも)様の乳母となった。それ以降は実朝様の乳母として、ちょこちょこ実朝様メインの儀式に名前を連ねている。この辺りはあまり目立つ行動はしていないなぁ。
というか、オレから見ても基本的に儀式の時に見かける人という感じで、あまり目立たない印象だったな。でも表には出ないところで活躍はしていたみたいだ。阿波局が動き出すのは……頼朝様の死後だ。
告げ口にはご注意! 政治的情報戦で活躍した阿波局
頼朝様の死後、頼家様の代になってから、幕府内は頼家様を抱えた比企(ひき)一族と、それに抵抗する北条に二分してしまった……というのは、比企能員(ひき よしかず)殿の記事でチラっと話したな。
阿波局は北条出身で実朝様の乳母だった事もあり、当然実朝様+北条派となって頼家様+比企派と対立する事になってしまった。しかも阿波局の夫である全成殿は頼朝様とは異母とはいえ兄弟だ。頼家様派にとっては脅威となったんだ。
そこでおそらく先手を打ったのが阿波局。頼家様派の中心人物だった梶原景時(かじわら かげとき)殿に罠をしかけたんだ。
ここら辺は詳しく語るとネタバレになるかもしれない。というか三谷幸喜殿の最も得意とする分野の話だから、知っていても知らなくても絶対に楽しめると思うぞ! エッグイ方面で!
ドラマでは阿波局の心情に注目!
結果から言ってしまえば、阿波局の天然とも狙ってるとも言える一言によって、梶原景時殿は追い詰められ、最終的に一族ごと滅んでしまった。
その3年後、今度は頼家様が阿野全成殿を謀反人として誅殺(ちゅうさつ)してしまうが、阿波局は尼御台によって助けられる。そして比企氏も滅亡し、頼家様も追放され、幼い実朝様が将軍となった。
阿波局は実朝様に仕え続けた。しかし実朝様が暗殺された後、自分の子が謀反の疑いで誅殺されている。阿波局がこの時どう動いたのかは記録に残っていない。
ただ淡々と「できごと」だけしか書かれていないので、阿波局が何を感じていて、どう思っていたのかを知るには、あまりにも材料が少なすぎるんだ。そこを三谷幸喜殿の脚本と、宮澤エマ殿の演技でどう見せてくれるか楽しみだな!
阿波局役、宮澤エマ殿について
うわ! めっちゃくちゃ美人だな! まぁオレの妻も負けてないけどな!
義時の妹。成り上がる北条家の冷静な皮肉家
三谷さんには「阿波局の人生を思い切り明るく演じてほしい」と、言われました。長い時間をかけて1人の人物を演じさせていただける喜びを胸に明るく、たくましく生きる阿波局を「歴史上の人物」を超えて愛される様、精いっぱい演じたいと思っています。
ほう! 表舞台では目立たずに暗躍していた阿波局の、波乱万丈な人生を「明るく」とな! ちなみに阿波局は義時や尼御台より長生きする。物語を主人公の近くで最初から最後まで見つめ続ける事になる阿波局……本当に、楽しみだな!
関連人物
父:北条時政 母:伊東祐親の娘
兄弟:北条宗時、北条政子、北条義時、ほか
夫:阿野全成
子:阿野時元、ほか
人物相関図:
『鎌倉殿の13人』予習にぴったり!源平合戦~鎌倉初期を相関図で解説!
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「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。「鎌倉殿の十三人」は、鎌倉幕府の二代将軍・源頼家を支えた十三人の御家人の物語です。和樂webによる各人物の解説記事はこちら!
1. 伊豆の若武者「北条義時」(小栗旬)
2. 義時の父「北条時政」(坂東彌十郎)
3. 御家人筆頭「梶原景時」(中村獅童)
4. 頼朝の側近「比企能員」(佐藤二朗)
5. 頼朝の従者「安達盛長」(野添義弘)
6. 鎌倉幕府 軍事長官「和田義盛」(横田栄司)
7. 鎌倉幕府 行政長官「大江広元」(栗原英雄)
8. 鎌倉幕府 司法長官「三善康信」(小林隆)
9. 三浦党の惣領「三浦義澄」(佐藤B作)
10. 朝廷・坂東の事情通「中原親能」(川島潤哉)
11. 頼朝の親戚「二階堂行政」(野仲イサオ)
12. 文武両道「足立遠元」(大野泰広)
13. 下野国の名門武士「八田知家」(市原隼人)
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