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2021.05.30

「こんな日だから絵を描くんだ」 映画『HOKUSAI』より、前に進む勇気がもらえる名言10選

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葛飾北斎の知られざる人生を再現した映画『HOKUSAI』には、権力者からの厳しい弾圧に耐え、力強く生きた人々の姿が描かれています。

そんな彼らの言葉には、現代に生きる私たちの思いに通じ、勇気をもらえるものがたくさんあります。
さっそく映画の中の名言を見ていきましょう!

映画『HOKUSAI』公式サイトはこちら
葛飾北斎の情報を集めたポータルサイト「HOKUSAI PORTAL」はこちら

▼セバスチャン・高木編集長のイケボで名言を聞くこともできます!

困難もチャンスと捉える蔦屋重三郎

まずは、版元の蔦屋重三郎の店が、禁制を犯したとして幕府にいち早く目を付けられ、店に並べられた商品である、多くの美しい作品が燃やされてしまう衝撃的な場面です。

『HOKUSAI』より、店の前で商品が燃やされる場面。蔦屋重三郎を演じる阿部寛さん ©︎2020 HOKUSAI MOVIE

役人たちに荒らされた店内で、一枚の絵を手に取る重三郎。汚されてもなお美しく、妖艶に輝く喜多川歌麿の作品に感嘆しながらこう言います。

全くありがてえもんだ、出る杭は打たれるってな。つまりうちが江戸で頭一つ抜けた版元だってお墨付きを貰えたってことだ

この非常事態に「ありがたい」だなんて……!超ポジティブな発想ができることこそ、江戸随一の版元、そして名プロデューサーとして大成功した秘訣だったに違いありません。

続けて、重三郎が堂々と放ったこの言葉。

こいつは恵の雨ってもんよ。これで江戸中がうちの出方に目凝らしやがる。種を植えるには、またとねぇ折ってことよ

「ピンチはチャンス!」とは、よく耳にする言葉ですが、困難に遭遇しながら、心からそう思える人がいったいどれほどいるでしょうか。

確かに、誰にも注目されないよりいいのかもしれない。

コロナ禍の今、まさに重三郎の強さを見習いたいですよね!

稀代の絵師たち

映画『HOKUSAI』には、江戸時代後期に人気を博し、現代の私たちをも魅了する絵師たちが登場します。彼らの言葉に耳を傾けてみましょう!

喜多川歌麿の本気

遊郭で、初めて喜多川歌麿と葛飾北斎が対面する場面です。

ストイックに絵を描いてきた自分とは、あまりに違う歌麿の制作の様子を見てふてくされる北斎に、歌麿はこう言います。

「だからお前の描く女には色気がねえんだ」「上っ面だけで命が見えねえ」

遊郭に入り浸り、派手な生活を送っているように見える歌麿ですが、その言葉には、美人画の大家としての誇りと、絵に真剣に向き合う姿が感じられます。

『HOKUSAI』より、喜多川歌麿を演じる玉木宏さんと、麻雪花魁を演じる芋生悠さん ©︎2020 HOKUSAI MOVIE
上っ面だけ整えたものって、なんとな~くわかっちゃいますよね。私も気を付けよう!

東洲斎写楽の信念

謎の多い鬼才の画家、東洲斎写楽。やはり蔦屋重三郎にその才能を買われ、一世を風靡します。

絵の勉強をしたことがなくとも魅力的な絵を描く写楽。それがおもしろくない、酒の席での歌麿や北斎との場面です。

北斎に詰め寄られると、写楽は自分の胸に手を当て、悠々と答えます。

「ここの赴くままに描くだけです」

若く、どこか飄々とした雰囲気の写楽が持つ、絵に対する確かな信念を感じる一言です。

『HOKUSAI』より、葛飾北斎を演じる柳楽優弥さんと、東洲斎写楽を演じる浦上晟周さん ©︎2020 HOKUSAI MOVIE
自分の心の声を聞いてみよう。

葛飾北斎の目覚め

生死をさまようほどの苦悩の果てに、ついに自分の新しい表現を掴んだ北斎が、重三郎を訪ねる場面です。

初めて重三郎に認められた、「波」を描いた絵を見せたときの一言。

「ただ描きてえと思ったもんを、好きに描いただけだ」

その表情は実にすがすがしいものでした。

彼らの言葉は、本当に人の心を打つのは、頭だけで考えたものや小手先のテクニックではなく、自分をさらけ出し、心の奥底から湧き出るものだけだと教えてくれているような気がします。

『HOKUSAI』より、重三郎に絵を見せる北斎の場面 ©︎2020 HOKUSAI MOVIE
自分をさらけ出すのって勇気がいる。そこを乗り越えないと!

「絵は世の中を変えられる!」

映画『HOKUSAI』の中では、「絵は世の中を変えられる」ことが繰り返し語られてます。最初はやはりこの人、蔦屋重三郎でした。

世界地図を広げて見せながら、北斎にこう語りかけます。

「絵を見るにゃあ、文字も言葉も関係ねぇ。面白えもんは、どこに行ったって、面白え。そうだろ?」

日本の浮世絵はいずれ海を渡って世界に知られることになるのですから、この時、江戸や日本だけでなく、世界を見ていた重三郎の視野の広さ、そして先見の明はさすがです。

『HOKUSAI』より、北斎に世界地図を見せる重三郎の場面 ©︎2020 HOKUSAI MOVIE

そして、真っすぐに北斎の目を見つめてこう言うのです。

「北斎……絵はな、…世の中変えられるんだぞ」

生涯を通し、猛烈に絵を描くことに北斎を突き動かしたのもこの言葉でした。

北斎の絵は、モネやドガ、ティファニー、ドビュッシーなど、海外のアーティストにも大きな影響を与えました。まさに絵で世界を変えた男!!

誰にも止められない!北斎の情熱と、それを支えた人たち

妻、コトの想い

映画『HOKUSAI』では、画業にまい進する北斎と、それを支える周囲の人々とのやり取りが丁寧に描かれています。
特に、妻、コトの献身的な支えは、北斎にとってなくてはならないものでした。

『HOKUSAI』より、瀧本美織さん演じるコトと北斎 ©︎2020 HOKUSAI MOVIE

子どもができた、とコトに告げられた北斎が、「すまねえ。こんな時代に生まれた子が、本当に幸せになれんのかって……」と、素直に喜べずにうつむいてしまった時の、コトの言葉です。

「私たちが喜んでやらなくてどうするんですか!」

今のコロナ禍にも通じる思いではないでしょうか。この後、無事に生まれた子をあやす幸せな二人の姿には、こちらも思わず笑顔になってしまいます。

この世に生まれたこと、誰よりも両親が喜んであげる。コロナ禍の今、すごく心に沁みます……。

こんな日だから描く!

ある日、北斎は友人の瑣吉(滝沢馬琴)とともに、怪談話の集まりに興じます。
そこへ突然、喜多川歌麿がご禁令に背いた罪で捕えられ、手鎖五十日の刑に処せられたという知らせが入り、慌てふためく同業者たち。

北斎が帰って仕事をすると言うので、「こんな日にも絵を描くのか!」と驚く瑣吉に放った一言です。

「こんな日だから絵を描くんだ」

こののち、長年のパートナーで友人の戯作者、柳亭種彦が亡くなった時にも、怒りに震えながら同じことを言った北斎。

『HOKUSAI』より、北斎を演じる田中泯さん ©︎2020 HOKUSAI MOVIE

北斎にとって、絵を描くことはどんな時でも自分ができることのすべてであり、弔いですらあったのかもしれません。どんな困難にも屈しないという強い思いを感じます。

こんな日だからこそ、いつもと同じことをする。これって大切なことなのかも。

決して諦めない

高齢になった北斎が、病に倒れて間もない頃。そんな体で旅に出ると聞いて驚く種彦に、北斎はこう言います。

「こんな体になった今だから見えるものがきっとあるに違いない」「まだまだ勝負してえんだ、世の中とよ」

娘のお栄の心配もよそに、亡き妻の位牌を懐に旅に出た北斎。そこで目にした自然の美しさに思わず息を飲みます。

『HOKUSAI』より、旅をする北斎の場面 ©︎2020 HOKUSAI MOVIE

この旅の経験をもとに、富士山を描いた浮世絵の数々、『冨嶽三十六景』や、有名な『神奈川沖浪裏』といった作品が描かれたのでした。

『HOKUSAI』より、『神奈川沖浪裏』製版の様子 ©︎2020 HOKUSAI MOVIE

実在の葛飾北斎も、75歳の時に出版した『富嶽百景』の跋文で自身の画業を振り返り、こう遺しています。

平均寿命が40歳であったこの時代に、「70歳までに描いたものは、実に取るに足りないものばかりであった」と。そして「80歳になればさらに向上し、90歳になればもっと奥義を極めて、100歳で神妙の域を超えるのではないだろうか」というのです。

90歳を超えても成長し続けたいと願う姿勢、見習いたい!

決して諦めないこと、常に新たな挑戦をし続けることの素晴らしさを、言葉で、そして絵で、北斎は私たちに永遠に語りかけてくれます。

葛飾北斎『富嶽百景』より『凱風快晴』 メトロポリタン美術館蔵

映画『HOKUSAI』は、台詞の多い映画ではありませんが、たくさんの心打たれる言葉が散りばめられています。
ぜひ彼らの熱い生き様を目にし、名言の余韻に浸ってみてはいかがでしょうか。

編集長セバスチャン高木が音声で解説した番組はこちら!

5月28日(金)劇場公開! 映画『HOKUSAI』

『HOKUSAI』5月28日(金)全国ロードショー(C)2020 HOKUSAI MOVIE

工芸、彫刻、音楽、建築、ファッション、デザインなどあらゆるジャンルで世界に影響を与え続ける葛飾北斎。しかし、若き日の北斎に関する資料はほとんど残されておらず、その人生は謎が多くあります。

映画『HOKUSAI』は、歴史的資料を徹底的に調べ、残された事実を繋ぎ合わせて生まれたオリジナル・ストーリー。北斎の若き日を柳楽優弥、老年期を田中泯がダブル主演で体現、超豪華キャストが集結しました。今までほとんど語られる事のなかった青年時代を含む、北斎の怒涛の人生を描き切ります。

画狂人生の挫折と栄光。幼き日から90歳で命燃え尽きるまで、絵を描き続けた彼を突き動かしていたものとは? 信念を貫き通したある絵師の人生が、170年の時を経て、いま初めて描かれます。

公開日: 2021年5月28日(金)
出 演: 柳楽優弥 田中泯 玉木宏 瀧本美織 津田寛治 青木崇高 辻本祐樹 浦上晟周 芋生悠 河原れん 城桧吏 永山瑛太 / 阿部寛
監 督 :橋本一 企画・脚本 : 河原れん
配 給 :S・D・P ©2020 HOKUSAI MOVIE

公式サイト: https://www.hokusai2020.com

書いた人

仙台市出身。京都で古美術商に就職し、特に日本画に興味を持つ。美術展を追いかけて旅するのが楽しみ。日本の伝統文化にあこがれ、書道や茶道、華道などを習うも才能はなさそう。すぐに眠くなり、猫より睡眠時間が長いとよく指摘される。現在は三陸沿岸に暮らし、東北の自然や文化に触れる日々。その魅力をたくさん発信できたら。

この記事に合いの手する人

大学で源氏物語を専攻していた。が、この話をしても「へーそうなんだ」以上の会話が生まれたことはないので、わざわざ誰かに話すことはない。学生時代は茶道や華道、歌舞伎などの日本文化を楽しんでいたものの、子育てに追われる今残ったのは小さな茶箱のみ。旅行によく出かけ、好きな場所は海辺のリゾート地。