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読み物
Culture
2021.11.06

伊賀光季の運命やいかに?『慈光寺本承久記』を読んでみたら坂東武者にも繊細な所があるんだね!

この記事を書いた人

『慈光寺本承久記(じこうじほん じょうきゅうき)を読んでみた』シリーズを、前回・前々回と長文で書いていたのですが、場面ごとに書いた方が良いんじゃないかと思い、今回からは小出し小出しで行きます!

「早く続きが読みたい」というお便りが何通も来た人気シリーズ! 前作まではこちら↓↓


第1回:序文が…終わらないッ…!鎌倉殿の13人の予習に『承久記』を読んでみたら、序文からスケール半端なかった!
第2回:2022年大河ドラマの予習に『慈光寺本承久記』を読み進めてみたら、心の中の乙女が射抜かれた

前回までのあらすじ


源実朝(みなもと さねとも)の死後、実権を握った北条義時が朝廷の命令に従わない! けしからん! ということで、とうとう後鳥羽(ごとば)上皇は義時を討伐する事になりました!

そこでまず、前哨戦として、義時の義兄弟である伊賀光季(いがみつすえ)を討ち取る事にします。

伊賀さんの姉妹が義時に嫁いでいます

伊賀光季は京都にいて、在京している鎌倉御家人たちのリーダー的存在でした。仕事に対して真面目で、何事も義時を立てて行動していました。

武芸の技も、心根も立派な彼を討ち取るには普通に攻めては返り討ちになるだけです。そこで後鳥羽院の命令として呼び出すことにします。もし命令に従って来るのならば、囲んで討ち取る。来ないのならば、命令に従わない無礼者として討ちとる、という算段です。

……あれ? 上皇のお住まいって……血穢れとか死穢れ出して良いんでしたっけ??

この作戦を立てたのは、伊賀光季をよく知る坂東武者の三浦胤義(みうら たねよし)さん。なんとも坂東武者み溢れる作戦ですね! 果たして上手くいくのでしょうか。

伊賀光季と佐々木広綱


伊賀光季討伐作戦の決行前日。承久3(1221)年5月14日。佐々木広綱(ささき ひろつな)という在京御家人が伊賀季光を呼んで酒宴をしました。

佐々木広綱の娘は、元服したばかりの伊賀光季の息子・光綱(みつつな)に嫁いでいて、広綱は光綱の烏帽子親(えぼしおや)でした。烏帽子親とは元服式の時に烏帽子を被せる役の人で、親のように後ろ盾となる人のことです。

このように親戚づきあいをしていた佐々木広綱は、伊賀光季に命が狙われている事を知らせようとしました。

伊賀光季の夢

素晴らしい美女を呼び寄せて、酒をふるまうと、何も知らない光季はとても感激しました。

「都には、沢山の武士が集まっている。一体何事だろうか。そのせいで私は夢見が悪いのです。

この前は、院宣(いんぜん=上皇の命令書)を持った使者が3度やってきて、私の弓の柄を7度切るという夢を見ました。

そんな感じで、私は世の中が暗くつまらないように見えていたんですが、今日の酒宴を思い出に、明日からまた頑張れます」

どうやら光季は、不穏な空気を感じ取ってションボリしていたようです。ちょっと繊細な人だったんですね。

ちなみに昔の日本では「神からのお告げ」とされていて、悪い夢を見ると男性も女性も現代人以上に気にしました。当時の文献を読むと、夢のお告げに従って寺社を建てたとか、どこそこの寺社に参拝に行ったとか記述が出て来ます。

現代は気軽に夢の意味を確かめられる「夢占い」が人気ですね。

北条政子にも夢にまつわる話が多々ありますが、その1つを過去記事でも紹介しています。
「よしよし、お姉ちゃんが助けてあげるよ」妹から悪夢を買った、北条政子の腹黒〜い思惑

▼夢についてのおすすめ書籍
夢を見るとき脳は――睡眠と夢の謎に迫る科学

佐々木広綱の忠告


何も知らずにこの酒宴を楽しんでいる伊賀光季を見て、佐々木広綱は「今日は人の身の上、明日は我が身の上」という武士の慣用句を思い出します。「今日他人の身の上に起きた災難は、明日は自分の身の上に降りかかる」という意味です。

もし伊賀光季が事前に逃げた上で討ち取られたら、きっとこの酒宴の事がバレて、「佐々木広綱は親戚のよしみで知らせた。けしからん」として、今度が自分が討たれてしまうだろうと考えました。

「だから、まったく関係ない言葉で、しかしそれとなく伝わるようにしなくては……」

佐々木広綱が脳みそをフル回転させて言葉を紡ぎました。

「後鳥羽上皇は何を考えているのかさっぱりわからん。都中に響き渡るほど大騒ぎする事もあるそうだ。だから、人の身の上をよく見ておくことだ。それはいつか自分に降りかかるかもしれん。もしもの事があれば、オレを頼ってくれ。オレもまたお前を頼ろう」

う~~~ん。伝わるような、伝わらないような……。

酔ってたらスルーしちゃうかも……

やがて日も暮れて来たので、伊賀光季は自分の屋敷に戻って飲み直すことにしました。……って、昼間っから飲んでたんか~い! でもまぁ、当時の人って職場でも戦場でも思いっきり酒を持ち込んでいましたからねぇ。真面目な優等生タイプでさえ。
禁酒は難しい…品行方正な鎌倉武士・北条泰時も苦戦、御成敗式目にも書かれているって?

伊賀光季の屋敷の酒宴はすごく豪華で、近隣の一族郎党を呼び寄せて、春日金王(かすがの かなおう)という当時の売れっ子の踊り名人をはじめ、多くの白拍子を呼んで一晩中どんちゃん騒ぎをしたそうです。

今回はここまで!

さてさて、伊賀光季に佐々木広綱の真意は伝わっていたのでしょうか。

ちなみにこの酒宴に呼ばれた春日金王は『沙石集』という説話集にも、白髪の白拍子として登場しています。過去記事でも紹介しているので、超エモカッコイイおばあちゃんたちの話をどうぞ!
女スパイ?白髪の美魔女、春日金王!真の美貌は「若さ」だけじゃない!

光季くんどうなっちゃうの!? 続きが気になる~(>_<)

「鎌倉殿の13人」13人って誰のこと? 人物一覧

「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。「鎌倉殿の十三人」は、鎌倉幕府の二代将軍・源頼家を支えた十三人の御家人の物語です。和樂webによる各人物の解説記事はこちら!

1. 伊豆の若武者「北条義時」(小栗旬)
2. 義時の父「北条時政」(坂東彌十郎)
3. 御家人筆頭「梶原景時」(中村獅童)
4. 頼朝の側近「比企能員」(佐藤二朗)
5. 頼朝の従者「安達盛長」(野添義弘)
6. 鎌倉幕府 軍事長官「和田義盛」(横田栄司)
7. 鎌倉幕府 行政長官「大江広元」(栗原英雄)
8. 鎌倉幕府 司法長官「三善康信」(小林隆)
9. 三浦党の惣領「三浦義澄」(佐藤B作)
10. 朝廷・坂東の事情通「中原親能」(川島潤哉)
11. 頼朝の親戚「二階堂行政」(野仲イサオ)
12. 文武両道「足立遠元」(大野泰広)
13. 下野国の名門武士「八田知家」(市原隼人)

▼ガイドブックもチェック
NHK大河ドラマ歴史ハンドブック 鎌倉殿の13人: 北条義時とその時代 (NHKシリーズ NHK大河ドラマ歴史ハンドブック)

書いた人

神奈川県横浜市出身。地元の歴史をなんとなく調べていたら、知らぬ間にドップリと沼に漬かっていた。一見ニッチに見えても魅力的な鎌倉の歴史と文化を広めたい。