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2021.05.21

八重姫とは?人物解説!新垣結衣演じる女性、その悲劇の伝説とは【鎌倉殿の13人予習シリーズ】

この記事を書いた人

今回の話は、源頼朝(みなもとの よりとも)様の最初の妻! ……とされている、伊東祐親(いとう すけちか)の娘・八重(やえ)姫について。

「とされている」というのは、実のところ八重姫の話は伝承によるところが大きいからだ。

おっと、紹介が遅れたな。鎌倉御家人・三浦胤義(みうら たねよし)が語る、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』予習シリーズ! オレが何者かは第1回参照なッ!

多くの矛盾がある八重姫伝説

伊東の祖父上(じじうえ)の回でも話した八重姫の件が、だいたいの話なのだが……もうちょっと詳しく話すと、大まかに3つのパターンがある。

一番オーソドックスなのが『曽我(そが)物語』の八重姫。そして伊豆半島の函南(かんなみ)町と、伊東市にも伝承がある。

この3つ、「頼朝様と八重姫の出会い」「頼朝様と八重姫の子(千鶴丸)の誕生」「千鶴丸の事件」「頼朝様と尼御台(あまみだい=北条政子)の出会い」の年代や順番がチグハグなんだ。

曽我物語の八重姫

ざっくり言うと、頼朝様と八重姫の子、千鶴丸(ちづるまる)は、伊東の祖父上が大番役で京都に行っている時に生まれた。

大番役を終えて祖父上が帰って来た頃、千鶴丸は3歳になっていた。流人の子であると知った祖父上は激怒して、水に沈めて殺してしまったのだ。

祖父上が実際に帰ってくるのは安元元(1175)年あたりで、当時は数え年だから、千鶴丸は承安3(1173)年あたりの生まれとなるな。

その翌年、安元2(1176)年あたりから頼朝様と尼御台は付き合い始めるんだけど、さらに翌年の治承元(1177)年に伊東の祖父上が頼朝様暗殺を企てたので、頼朝様は北条の所へ逃げ込んだ。大姫が生まれたのはその翌年だ。

ちなみに、『吾妻鏡(あずまかがみ)』だと、伊東の祖父上が頼朝様暗殺を企てたのは安元元(1175)年になっている。怒れる伊東から頼朝様を助けた北条! そして頼朝様は尼御台と運命の恋に落ちた……って形になるようにしたんだと思う。

伊東市の民話

伊東市に伝わる民話だと、頼朝様と八重姫が出会い、千鶴丸が生まれたのは、治承元(1177)年の暮れ。伊東の祖父上が殺した千鶴丸は生まれたばかりで、その流れで頼朝様暗殺を企てる形だ。

函南町の伝承

函南町の伝承は、もっとスキャンダラス! 大まかな流れは『曽我物語』と同じだが……なんと伊東の祖父上は頼朝様と八重姫の仲を認めて、千鶴丸も受け入れている!

さらに頼朝様と尼御台が付き合い始めた時にはまだ千鶴丸は死んでない! 妻子がある状態で尼御台に手を出しているのだ! それを知った伊東の祖父上は逆上して、千鶴丸を殺してしまった……。この千鶴丸の最期が一番理不尽だな。

その後の八重姫

事件の顛末も数パターンあるが、八重姫のその後もいくつかある。その中で有名なものの1つは千鶴丸を殺された事を嘆き悲しんだあまりに入水自殺してしまう。もう1つは北条の家来である江間小四郎(えま こしろう)に嫁がされるというものだ。

この江間小四郎、大河ドラマの予習をし始めた人には聞き覚えがあるだろう。北条義時が一時期名乗っていた名が「江間四郎」だ。

義時と八重姫

だが、この伝承に登場する江間小四郎が義時かというと、疑問が残る。なぜなら義時は長寛元(1163)年生まれ。千鶴丸の事件が起こったのが治承元(1177)年だとしても14歳。元服しているのか、していないのか微妙な年齢だ。

仮に元服していたとしても、義時は頼朝様の挙兵した頃、つまり治承4(1180)年の時点で、「北条四郎」と名乗っている。江間四郎と名乗るのは治承5(1181)年からだ。

だからもし、ドラマで八重姫の再婚相手が義時だとしたら、物語のために「あえて」そうしているということになるんだろうな。

八重姫役、新垣結衣殿について

北条義時の初恋の人にして、源頼朝最初の妻

つらい宿命を抱えながらも心に宿した愛を生涯失うことがなかった、ある意味では秘めた強さを持った女性なのではないかと想像します。諸説ある中、断片的ではありますが八重の人生を知ったとき微(かす)かに胸が震えるような気がしました。

NHK_PRサイト 新垣結衣のコメントより抜粋

少年・義時の初恋のお姉さんがガッキーだと!? なんて贅沢な!!

でも、あの悲劇を目の当たりにしてしまったら……そりゃ拗(こじ)らすわなぁ……。恋した相手に一年間も手紙送り続けるだろうなぁ……。

と今回の大河ドラマ、「予測不能エンターテインメント」と銘打たれているけど、まあ史実を知ってる勢からすると「はは~ん、ここに〇〇を持って来ましたか~。ということはこんな感じかな~?」ってだいたいの予想はついていた。

けれど数パターンも伝承がある八重姫に「義時の初恋相手」という設定がなされたことで、史実勢は「え? 八重姫と義時が……?」「どのパターンで行くの?」と混乱した。結果、ガチで予測不能になってしまった感がある。どうなってしまうんだろう……。今からドキドキしてくるな。

書いた人

承久の乱の時宮方で戦った鎌倉御家人・西面武士。妻は鎌倉一の美女。 いわゆる「歴史上人物なりきりbot」。 当事者目線の鎌倉初期をTwitterで語ったり、話題のゲームをしたり、マンガを読んだり、ご当地グルメに舌鼓を打ったり。 草葉の陰から現代文化を満喫中。