ところで、こうも暑いと毎日冷たいものを食べたくなってしまう。我が家では4月から冷奴が連日八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍をしているから、今年のMVPはもう冷奴氏に決まったような雰囲気まである。
冷奴。冷たい豆腐のことだが、食感や味の爽やかさに反して、なかなかにミステリアスな存在だ。温かい豆腐は「湯豆腐」で特に疑問点もないのだが、クールになった途端に、なぜかナイスガイが出現する。これは何ごとか。
冷奴の語源
さっそく辞書を紐解いて――おや? 知らなかった事実が発覚。冷奴の定義が「冷やした豆腐を醬油と薬味で食べるもの」となっている。我が家では醬油や薬味ではなく、佃煮やキムチ・キュウリやナスの浅漬けとともに楽しんでいることが多いのだが、これは「冷奴 with T(or K or N)」と言ってはいけなかったのか。けれど、調味料メーカーや豆腐店などのサイトでも醬油&薬味以外のアレンジレシピを「冷奴」として多数紹介していたし、『日本の歳時記』には「冷やした豆腐を切っただけのもの」とあったし。そもそもこの記事の主眼はそこではないので、突っつくのはここまでにしておこう。
語源である。そう、なぜ冷奴と言うのかを調べていたのである。
ということで改めて。
まず、「冷奴」は江戸時代にできた言葉であるらしい。また、「奴豆腐(やっこどうふ)」「冷豆腐(ひやどうふ)」「水豆腐(みずどうふ)」とも呼ぶ。
辞書事典類(参考文献参照)には、4通りの語源説が掲載されていた。
・奴(やっこ)と呼ばれた中間(ちゅうげん。武士に仕えて雑務を担った)の着物の四角い紋に形が似ていたから
・「奴豆腐」と「冷豆腐」が合わさった言葉
・身分の低い人が煮ないで(冷たいままで)食べたことから
・冷たいという意味の「冷やっこい」が変化し、「ヒヤヤカ豆腐」→「冷奴」となった(ただし、反論も併記)
※「冷奴」および「奴豆腐」の項の該当部分より抜粋
ふむふむ、なるほど。
そして驚くべきことに、対義語の「熱奴(あつやっこ)」も存在することが判明した。湯豆腐と同じ意味だが、は~、あったのか、熱奴。
とはいえ、現代では冷たいのを「冷奴」、あたたかいのを「湯豆腐」と呼ぶのが一般的だ。なぜこれらが生き残ったのかは分からないものの、語感として妙に季節の風を感じられる響きがそれぞれあるような。
「冷奴」って英語でどう言う?
さっぱり食べられてクセも少なく、栄養価が高い冷奴。ぜひグローバルに活躍していただきたいのだが、そうなると気になるのは「英語でどう説明するか」。
「Chilled tofu」「Cold tofu」あたりがスタンダードだが、「Hiyayakko」と日本語発音そのままで通じることもあるようだ。
ちなみに豆腐は「tofu(日本語発音そのまま)」あるいは「bean curd」。
最近ではトマトとオリーブオイルをかけるイタリアン風など、洋食とのマリアージュレシピも多数考案されているし、一ファンとして、更なるご発展ご多幸を心からお祈りしている。
アイキャッチ画像:西村重信 図『はけもの』より、豆腐小僧部分拡大 国立国会図書館デジタルコレクションより加工利用(https://dl.ndl.go.jp/pid/14208812)
参考文献:
・『デジタル大辞泉』小学館
・『日本国語大辞典』小学館
・『日本の歳時記』小学館
・『世界大百科事典』平凡社
・『プログレッシブ和英中辞典』小学館

