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2022.01.16

北条義時追討の院宣を持って爆走!『慈光寺本承久記』を読んでみたら、ちょっと心配な子が出てきた。

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ここまで来たら、最後まで突っ走るしかないオタクが語る『慈光寺本承久記』シリーズ。本編も突っ走っています。

▼「『慈光寺本承久記』を読んでみた」シリーズの過去作はこちら!

前回までのあらすじ

北条義時(ほうじょう よしとき)が朝廷の言う事を聞かなくてムカついた後鳥羽(ごとば)上皇は、ついに北条義時を追討することに! その前哨戦として北条義時の家来である京都在住の伊賀光季(いが みつすえ)を討ち取ったのであった……!

義時、逃げて~~!!

ついに発令! 義時追討院宣!

さて。伊賀光季は自害する前、密かに使者を鎌倉に送りました。三浦胤義(みうら たねよし)も、兄に手紙を書いて使者を派遣しました。二人の使者は5月15日戌の刻(日が暮れてしばらく経って、真っ暗になった頃)に出発しました。

後鳥羽上皇は藤原秀康(ふじわら ひでやす)を呼び寄せてこう命じました。

「秀康よ、この命令を承るがよい。

武田信光(たけだ のぶみつ)、小笠原長清(おがさわら ながきよ)、小山朝政(おやま ともまさ)、宇都宮頼綱(うつのみや よりつな)、中間五郎(まかま ごろう)、足利義氏(あしかが よしうじ)、北条時房(ほうじょう ときふさ)、三浦義村(みうら よしむら)らに味方につくよう説得する文面を送らせよ」

そして側近の葉室光親(はむろ みつちか)に院宣(いんぜん)を書かせました。院宣というのはざっくりと言えば上皇による命令書のことです。さらに詳しく言うと、上皇のお言葉を書き写して側近の名で発行したものです。

当時の上皇は国の最高権力者ですから、お言葉ひとつで全てが決まってしまいます。だから何人かの手を経て工程を増やすことで院宣という正式な発表としました。

院宣の効力すご

ここに告ぐ。源実朝(みなもとの さねとも)が亡くなった後、家人たちは、ただ後鳥羽上皇の判断を仰ごうと申していた。そして北条義時は、鎌倉の責任者として誰がふさわしいか考えた。

鎌倉将軍の三代の後を継ぐ人は鎌倉にはもういないと言って、色々と注文をつけて、摂政(せっしょう)の子息・三寅(みとら)を次の将軍として鎌倉へと送らせた。しかし、三寅はまだ幼いので何もわからないのを良いことに、北条義時は野心を持ち、権威を持とうとした。これをどうして許せようか。

よって今後は義時の職を停止し、後鳥羽上皇の沙汰を待つべし。もしこの決定を受け入れず、なお反逆の企てをたてようとするならば、早くその命を落とすがいい。この命に従うのなら、褒美をとらそう。

この命令を知らしめよ。

承久三年五月十五日 葉室光親

この院宣を鎌倉へ届ける役目は「押松丸(おしまつまる)」という若者に託されました。

ついに登場! 承久記最大の萌えキャラ、押松丸!

この押松くん、どういう経歴の子か全くわからないんですけど、別系統の「流布本(るふぼん)承久記」では「足が速いから選ばれた」と書かれています。

……っえ? 足が速いから? 馬は……? 馬で行くんじゃないの? 走るの?

そんな読者の疑問をよそに、押松くんは16日の寅の刻(夜明けちょっと前)に出発します。

ここで慈光寺本承久記は『走れ押松丸』シリーズに突入……?

「行きは急ぐけど、帰りはゆっくりでもいいだろう。後鳥羽上皇の御使いなのだし、鎌倉の有力者たちからお土産をいっぱい貰えるんだろうな! 宮仕えしててよかった♪」

……ちなみにこのセリフ、いつものように私が分かりやすくギャグテイストにしているわけじゃないんですよ。そのまんま現代語訳しているだけなんですよ。……大丈夫かなこの子。ちょっと心配になってきました。

当時、京から鎌倉まではだいたい20日間ですが、押松くんは16日の明け方に京をでて、19日の夕方に到着します。……3日半!?

京都・鎌倉間はおよそ440kmあります。Googleマップ先生によれば、徒歩で91時間。3日と19時間ですが、これは休みなく、一定速度で歩いた場合です。それを押松くんは、3日半で?

ちなみに押松くんより早く、15日の夜に出発した伊賀光季と三浦胤義の使者は、19日の日没頃に鎌倉に到着しています。え? ……途中で追い越している……?

なんか、押松くんは正規ルートを通ってない気がします。押松くん、いったい何者なんだ。まさか今流行のウマ娘だったのか……。

押松くんに謎と不安が尽きませんが、次回に続きます!!

もう義時より院宣より、押松くんが気になってきちゃいました。

アイキャッチ画像:『東海道五拾三次之内 平塚 縄手道』 東京富士美術館

▼目指せ!押松くん!
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「鎌倉殿の13人」13人って誰のこと? 人物一覧

「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。「鎌倉殿の十三人」は、鎌倉幕府の二代将軍・源頼家を支えた十三人の御家人の物語です。和樂webによる各人物の解説記事はこちら!

1. 伊豆の若武者「北条義時」(小栗旬)
2. 義時の父「北条時政」(坂東彌十郎)
3. 御家人筆頭「梶原景時」(中村獅童)
4. 頼朝の側近「比企能員」(佐藤二朗)
5. 頼朝の従者「安達盛長」(野添義弘)
6. 鎌倉幕府 軍事長官「和田義盛」(横田栄司)
7. 鎌倉幕府 行政長官「大江広元」(栗原英雄)
8. 鎌倉幕府 司法長官「三善康信」(小林隆)
9. 三浦党の惣領「三浦義澄」(佐藤B作)
10. 朝廷・坂東の事情通「中原親能」(川島潤哉)
11. 頼朝の親戚「二階堂行政」(野仲イサオ)
12. 文武両道「足立遠元」(大野泰広)
13. 下野国の名門武士「八田知家」(市原隼人)