新しく生まれ変わった荏原 畠山美術館
東京・白金台にある「荏原 畠山美術館」は、荏原製作所の創業者である畠山一清(号・即翁 1881〜1971)の美術コレクションを収蔵公開する美術館。2019年から大幅な改修工事により長期休館をしていましたが、本館の改修とともに新館が建設され、2014年10月にリニューアルオープンしたのです。
畠山コレクションは、素晴らしい茶道具を中心に、書画・陶磁・漆芸・能装束など、国宝6件、重要文化財33件を含む約1300件を誇ります。
岡田さん、『荏原 畠山美術館』をご存じでしたか?
もちろん存じ上げていました。茶道具とともに日本美術の傑作が数多くありますよね。じつは大河ドラマ『軍師官兵衛』の撮影に入る前からお茶の稽古をしていましたし、第二次世界大戦を描いた映画『永遠の0』(2013年)がきっかけとなり、特攻隊員だった裏千家大宗匠・千玄室(せんげんしつ)さんとの対談のために京都へ行ったりと、日本文化や日本美術は、自分にとってずっと親しんできた世界でした。もともと自分は、時代物の作品に関わることが多いため、そうした世界に共感を覚えるんだと思います。
ですから、プライベートで、改装前の「畠山記念館」に来たことも。気配を消していましたから、だれにも気づかれていなかったと思いますが……(笑)。
極上の本物を知ることが、役に深みを与えてくれる
ではなぜ、こうした美術館に足を運ぶのかといえば、やはり‟極上の本物を知っておきたい”という気持ちからですね。
今、時代物の映像作品に関わっていると、いろんな場所で切迫した状況を迎えていると感じています。たとえば、役者のきものや帯、刀、蓑や笠、履物をはじめ、江戸時代の座敷を彩る建具や工芸品である掛物、香炉などにしても、優れた「本物」を用意することが、とても難しくなってきました。
日本を支えてきたものづくりの人たちが高齢化し、以前は普通にできたものがつくれなくなってきていることもありますし、それを「どう身につけるのか」「どんな状況で使うのか」「どういうものが良いものか」ということもわからなくなってきています。
もちろん制作現場には、時代考証の専門家もいますけれど、役者がそうしたことを「知らなくていい」とは思えなくて。
日本美術や日本文化の「極上の本物」に接すると、そのリアリティに胸が震えます。
安土桃山時代に、織田信長の戦略から、武将たちの心を「土地よりも貴重な茶器が欲しい」というメンタリティーへ変化させた茶器とは一体どういうものなのか。それを知っておくことは、信長を演じる上で役に立たないわけはないですから。
美術館に足を運び、国宝や重文、その他の美術品を見ることは、自分にとってたいへん意味のある学びになっているのです。
※2025年2・3月号『和樂』の〈開館記念スペシャル〉「荏原 畠山美術館」誕生!
「新しい時代に受け継がれる 茶の湯の美に出合う」もご覧ください。
荏原 畠山美術館基本情報
住所:東京都港区白金台2ー20ー12
開館時間:春季展・夏季展(4月~9月)10:00~17:00、秋季展・冬季展(10月~3月)10:00~16:30
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、展示替え期間、年末年始
荏原 畠山美術館公式ウェブサイト
https://www.hatakeyama-museum.org/
岡田准一
1980年生まれ、大阪府出身。俳優として活躍。主な出演作に「木更津キャッツアイ」シリーズ、「タイガー&ドラゴン」、「SP」シリーズ、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」「どうする家康」など。自身が主演・プロデューサー・アクションプランナーを務める「イクサガミ」(今村翔吾原作、講談社文庫刊)が2025年に配信予定 。
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