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2022.10.13

ついに登場、源義経!『吾妻鏡』で読む大河ドラマ・富士川の戦い【鎌倉殿の13人】

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令和4(2022)年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をもっと楽しむために、原作である『吾妻鏡』を読んでみようコーナー! 仲間を増やしながら鎌倉に辿り着いた頼朝様! 一息つく暇もなく、平清盛殿の孫・維盛(これもり)殿が率いる平家の大軍が駿河国までやってきた知らせが届く! 頼朝様は坂東武者を率いて決戦の地、富士川を目指すのだった!

▼今までの流れはこちら!

受けた屈辱はキッチリ返す!!

頼朝様に従う坂東武者は多く集まったが、それでもまだ従わない者が多かった。

その1人が波多野義常(はたの よしつね)殿。現在の神奈川県秦野市あたりを拠点としていた豪族で、かつては頼朝様の父・義朝(よしとも)様に従っていて、叔母が義朝様の妻となっている。そして次男の朝長(ともなが)殿が産まれた。朝長殿についてはこちらの記事を参考にしてくれ。
平治の乱で父に殺された源朝長。肉親同士の悲劇の連鎖はなぜ起こったのか?

波多野一族の拠点が現在の秦野! 秦野の読みは「はだの」と濁るのだそうだぞ!

波多野一族はだんだんと義朝様との関係が悪化していて、頼朝様の挙兵の時の呼びかけに応えなかったばかりか悪口まで言ったそうだ。

だから治承4年10月17日、鎌倉から西に向かうついでに義常殿を討ち取ろうとしたんだ。

ついで、で討ち取るって言い回し、怖いんだが……。さすが鎌倉時代……。

国土地理院地図で作成

しかし討ち手の刺客が到着する前に、義常殿は自害した。義常殿の子息・有常(ありつね)殿は母方の伯父である大庭景義(おおば かげよし=大庭景親の兄で頼朝に従っている)殿に身柄を預けられたので難を逃れた。

以降、有常殿は目立たぬようにひっそりと暮らし、7年後に流鏑馬(やぶさめ)の技量を頼朝様に認められて所領を取り戻すのだが、これはまた別の話……。

だから、あんたの所の兵、なんとかしてよ!

波多野義常殿が自害した同日、頼朝様の元に走湯山(そうとうさん)の僧から訴えが届いた。

「戦のために兵たちが山の中を通るので、荒らされて困っています」

頼朝様は「狼藉してはならない」という命令書を書いて返事したそうだ。

……なんだか以前もそんな事があったな。走湯山には苦労をかける。

ただ単に山の中を通っている、ではないから問題なのだ……。

武田信義殿とご対面!!

17日の夜になって、頼朝様は黄瀬(きせ)川に到着した。そして武田信義(たけだ のぶよし)殿・北条時政(ほうじょう ときまさ)たち2万騎と合流した。

平家との合戦は24日にすると定め、武田殿たちの労をねぎらったのだった。

伊東祐親、確保ぉー!

10月19日、伊東祐親(いとう すけちか)祖父上は平家軍に合流しようと、伊豆から船で向かっていた。しかし鎌倉軍に見つかってしまい、生け捕りになった。

生け捕られた伊東の祖父上は、頼朝様の宿所に連れて来られた。そこに婿であるオレの父上がやってきて「罪名が決まるまで私に預からせてください」と談判した。

家系図だとこんな感じ。敵方の縁者を預かって助命嘆願するのはよくある事だった。

というわけで、ドラマで伊東の祖父上が和田義盛(わだ よしもり)畠山重忠(はたけやま しげただ)に討ち取られようとしたところを、義時兄上(三浦義村)が助けたというのは創作なのだ。義時は駿河国にいるし、兄上はまだ元服していない(と思われる)。でもまぁ、ドラマでの兄上めっちゃカッコよかったな……。

ドラマは創作も含めて楽しむものだからな、史実そのものではないんだな。

『吾妻鏡』での富士川の戦い!

治承4(1180)年10月20日、頼朝様は駿河国の賀島(かしま=現・静岡県富士市南西部)に到着した。平家軍の大将も平維盛(たいらの これもり)も富士川の西岸に陣を張った。ちなみに、当時の富士川は現在より西に流れていて、湿地帯で沼だらけだったんだ。

国土地理院地図で作成

『平家物語』での富士川の戦いは和樂webでも記事にされているが、『吾妻鏡』ではどうかかれているかというと……。

治承4(1180)年10月20日

夜半頃、武田信義が計略を企てた。密かに平家軍の背後を襲おうとしたところ、沼に集まっていた水鳥の一群が飛び立った。その羽音はまるで軍勢の音に聞こえ、平家たちは驚き慌てた。(中略)平家たちは夜が明けるのを待たずに、すぐさま京へと帰ってしまった。

その時、鎌倉軍の飯田家義父子が富士川を渡り、平家軍を追いかけた。平家の家人・伊藤次郎が引き返して合戦になり、飯田の息子は討ち取られたが、家義は伊藤を討ち取った。

『平家物語』ではなぜ水鳥が飛び立ったのかは謎だったが、『吾妻鏡』では武田信義殿のせいだったんだな。ちなみにドラマでは北条時政とオレの父上のせいだった。

水鳥の羽音に驚いて撤退した、って印象的なシーンだから、富士川の戦い=水鳥の件、なイメージがあるかも?

『吾妻鏡』は御家人たちから当時の記録を集めたのか、飯田父子の話のように〇〇が△△を討ち取ったという話が挟み込まれているのもポイントだな。いくら北条バイアスが強いからといっても、どこに誰がいて何をしたのかぐらいは信じたい。

深追いしちゃダメ!

翌10月21日、頼朝様は平家軍を追いかけて討ち取るため、兵たちに京へむかうように命じられた。しかし千葉常胤(ちば つねたね)殿とオレの父上、上総広常(かずさ ひろつね)殿がそれを諫めた。

「常陸国の佐竹氏が、いまだ頼朝様へ服従していません。とくに佐竹隆義(さたけ たかよし)は平家に従って在京しています。まず東国を平定してから西国へ行くべきです」

頼朝様はこれに従って、黄瀬川の宿まで戻り、甲斐源氏の安田義定(やすだ よしさだ)殿を遠江国に派遣し、武田信義殿を駿河国に置いて東国を西国から守るようにした。

兄弟感動の再会その2!

さて、ここでいよいよあの男が登場する!

若者が一人、宿所のそばにたたずんでいた。頼朝様にお会いしたいのだと言う。

土肥実平(どい さねひら)、土屋宗遠(つちや むねとお)、岡崎義実(おかざき よしざね)たちはこの若者を怪しんで取次せずに放っておいた。

しかし、頼朝様がこれをお聞きになり、「年齢を考えると、奥州に行った義経ではないか? 早く対面しよう」とおっしゃったので、土肥実平が取り次いだ。

その人はまさしく源義経だった。すぐに頼朝様の御前へと進み出て、互いに昔を語り合い、なつかしさに涙を流した。

『東海道名所図会 巻之五』出展:国立国会図書館デジタルコレクション

有名な「黄瀬川の対面」だな! こうして鎌倉軍は一騎当千の名軍師を仲間にしたのだ!

再会は感動的だったのだなあ……ちょっと複雑。

御恩と奉公の始まり!

相模国へ戻ったのは、ここから2日後の10月23日。御家人たちに初めて恩賞を与えた。

その恩賞というのが「本領安堵(ほんりょう あんど)」と言われる武士たちの本拠地をその人の土地と保証することだ。まぁ、現代風に解りやすく言うと「土地の権利書の発行」ってことだな。それから、新しい土地を与えたりもした。これが「御恩と奉公」の「御恩」の部分だな!

そして石橋山の戦いで平家方についた者たちが捕らえられた。大庭景親(おおば かげちか)も捕らえられ、上総広常(かずさ ひろつね)殿が身柄を預かることになった。

他にも多数の者が捕らえられたが、ほとんどが身柄を御家人たちが預かり、その場で処刑されたのは1割程度だったそうだ。まぁ……野蛮野蛮と言われる坂東武者も、やたらめったら処罰しているわけじゃないんだよ。

御恩と奉公のはじまり、そして常陸へ。どうなる頼朝!?

さて、平家は撃退したけれど、新興勢力の鎌倉軍にとって敵はまだまだ多い。次は常陸国へ佐竹攻めだ!!

アイキャッチ:歌川広重『本朝名所 駿州富士川渡船之図』 出展:シカゴ美術館

「鎌倉殿の13人」13人って誰のこと? 人物一覧

「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。「鎌倉殿の十三人」は、鎌倉幕府の二代将軍・源頼家を支えた十三人の御家人の物語です。和樂webによる各人物の解説記事はこちら!

1. 伊豆の若武者「北条義時」(小栗旬)
2. 義時の父「北条時政」(坂東彌十郎)
3. 御家人筆頭「梶原景時」(中村獅童)
4. 頼朝の側近「比企能員」(佐藤二朗)
5. 頼朝の従者「安達盛長」(野添義弘)
6. 鎌倉幕府 軍事長官「和田義盛」(横田栄司)
7. 鎌倉幕府 行政長官「大江広元」(栗原英雄)
8. 鎌倉幕府 司法長官「三善康信」(小林隆)
9. 三浦党の惣領「三浦義澄」(佐藤B作)
10. 朝廷・坂東の事情通「中原親能」(川島潤哉)
11. 頼朝の親戚「二階堂行政」(野仲イサオ)
12. 文武両道「足立遠元」(大野泰広)
13. 下野国の名門武士「八田知家」(市原隼人)

▼和樂webおすすめ書籍
吾妻鏡(上)―マンガ日本の古典〈14〉 (中公文庫)

書いた人

承久の乱の時宮方で戦った鎌倉御家人・西面武士。妻は鎌倉一の美女。 いわゆる「歴史上人物なりきりbot」。 当事者目線の鎌倉初期をTwitterで語ったり、話題のゲームをしたり、マンガを読んだり、ご当地グルメに舌鼓を打ったり。 草葉の陰から現代文化を満喫中。

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人生の総ては必然と信じる不動明王ファン。経歴に節操がなさすぎて不思議がられることがよくあるが、一期は夢よ、ただ狂へ。熱しやすく冷めにくく、息切れするよ、と周囲が呆れるような劫火の情熱を平気で10年単位で保てる高性能魔法瓶。日本刀剣は永遠の恋人。愛ハムスターに日々齧られるのが本業。