鎌倉御家人・三浦胤義(たねよし)による鎌倉殿の13人予習シリーズ!鎌倉時代初期を生きた御家人目線から、『鎌倉殿の13人』の登場人物を解説するぞ! 第3回は「平清盛」! ……といっても、またまたオレが生まれる前に亡くなっている人物だし、父上(義澄)や兄上(義村)も直接会ったことはないのでのう……。
あ、そういえば、よく「坂東武者は平氏なのに平家を裏切って源氏についた」って言われるけど、坂東武者は平氏だけじゃないし、ウチ(三浦)が平家の家人(けにん)だった事は一瞬たりともないからな! 今回はそこら辺の事をちょっと語ろうか……。
おっと、紹介が遅れたな。オレについては、第1回を参照して欲しい。
平氏だけど平家じゃないってどういう事?
まず、オレらの時代の「姓」とは、天皇から与えられる四種類。「源・平・藤(藤原)・橘」だ。鎌倉御家人となる坂東武者の多くは、平安京を作った桓武(かんむ)天皇から平姓を与えられた高望王(たかもちおう)を祖とする高望王流桓武平氏だ。そこから坂東に根付いたので坂東平氏ともいわれる。
ちなみに頼朝様の一族は清和(せいわ)天皇から源氏姓を賜った清和源氏で、その中でも河内(かわち)国に本拠地を置いたので河内源氏と呼ばれている。
で、平清盛殿の平氏はというと……高望王流桓武平氏。伊勢に本拠地があるので伊勢平氏と呼ばれている。いわゆる「平家」とは、この伊勢平氏の中でも清盛一門をさす言葉で、他の平氏は平家とは呼ばないのだ。だから坂東平氏は平家ではない。
「えっ、でもやっぱり同じ桓武平氏じゃん」と思ったろう? 違うんだ。伊勢平氏と坂東平氏はかなり初期に枝分かれしてるんだ。
伊勢平氏の大本の流れは高望王の正室の子である平国香(くにか)。巨乳グラビアアイドルみたいな名前だが、残念ながらオッサンだ。対して坂東平氏は、高望王の側室の子、平良文の流れをくんでいる。ちなみに三浦一族も良文流桓武平氏だぞ!
「やっぱり親戚でしょ?」……違うんだ。国香や良文の時代は源平合戦より300年ぐらい前なんだ。ここまで来たらもはや他人だろう? ましてや正妻と側室だし……顔合わせた事も、あるんかなこの2人……。
ちなみによくある勘違いで、平将門公が平家の先祖と思われる事も多いが……先祖じゃない上に、平国香は将門公と敵対してるので、覚えておいてくれな!
平清盛と坂東武者
平家が覇権を握っていた頃の坂東には、平家の家人の坂東武者と、源氏の家人の坂東武者が混在していた。けれど、常にいがみ合っていたわけじゃないんだ。家族ぐるみの付き合いしてる事も多かったし、現にオレの母上は平家の家人だった伊東氏出身だからな。
とはいえ、平家が全盛期の頃は、そりゃ平家家人側の方が権力を持っていた。そんな中で一念発起した頼朝様になぜ多くの平家家人が寝返ったかというと……。ぶっちゃけなぁ、清盛殿、東国が視界に入ってなかったんだと思う。
当時の「国」って、今みたいに日本列島全部を意識してなくてさ……。大きなくくりで東国・西国に分かれていて、清盛殿が認識していた「日本」って西国だけだったと思う。東国は遠くの野蛮な未開の国って認識。まぁ、お公家さんと一緒だな。端的に言うと東国をめっちゃナメてた。
大企業だけど、上司があからさまに下に見て尊重してくれない……って時に、まだ小さな会社でも社長自ら「あなたの力が必要なんだ」と言ってくれるなら、そりゃ転職しちゃうよな。
もしも清盛殿がほんのちょっとでも東国を警戒していたら。東国の武士たちの内情を知っていたら。頼朝様の挙兵の時に、ご子息を東国に誰か1人でも派遣したら。源平合戦は変わってたのかなぁって思う。少なくとも鎌倉で武士の都を作るなんてできなかったろうなぁ。
平清盛役の松平健殿について
平清盛殿、大河ドラマでWマツケンコンプリート!!
平成17(2012)年の『平清盛』の松山ケンイチ殿がまだ記憶に残っている大河ドラマファンも多いだろう。で、そこにもう1人のマツケンこと松平健殿!
『源氏の宿敵。日本を支配する平家の総帥』
〈清盛〉の激しい生きざま、抑揚をつけてしっかりと演じたいですね。諸行無常(しょぎょうむじょう)、盛者必衰(じょうしゃひっすい)をもって、時代のバトンを鎌倉へと渡したいと思います。
鎌倉時代がメインとなるなら、清盛殿の出番は短そうだが……これまた視聴者の記憶に残る「平清盛」になりそうだな!
関連人物
父:平忠盛 実母:後白河上皇の侍女 継母:池禅尼
兄弟:多数
正室:高階基章の娘 継室:平時子(二位尼)
子女:宗盛 徳子 他多数
人物相関図:
『鎌倉殿の13人』予習にぴったり!源平合戦~鎌倉初期を相関図で解説!
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▼ガイドブックもチェック
NHK大河ドラマ歴史ハンドブック 鎌倉殿の13人: 北条義時とその時代 (NHKシリーズ NHK大河ドラマ歴史ハンドブック)
「鎌倉殿の13人」13人って誰のこと? 人物一覧
「鎌倉殿」とは鎌倉幕府将軍のこと。「鎌倉殿の十三人」は、鎌倉幕府の二代将軍・源頼家を支えた十三人の御家人の物語です。和樂webによる各人物の解説記事はこちら!
1. 伊豆の若武者「北条義時」(小栗旬)
2. 義時の父「北条時政」(坂東彌十郎)
3. 御家人筆頭「梶原景時」(中村獅童)
4. 頼朝の側近「比企能員」(佐藤二朗)
5. 頼朝の従者「安達盛長」(野添義弘)
6. 鎌倉幕府 軍事長官「和田義盛」(横田栄司)
7. 鎌倉幕府 行政長官「大江広元」(栗原英雄)
8. 鎌倉幕府 司法長官「三善康信」(小林隆)
9. 三浦党の惣領「三浦義澄」(佐藤B作)
10. 朝廷・坂東の事情通「中原親能」(川島潤哉)
11. 頼朝の親戚「二階堂行政」(野仲イサオ)
12. 文武両道「足立遠元」(大野泰広)
13. 下野国の名門武士「八田知家」(市原隼人)
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源氏と平氏の違いや戦いを3分でおさらい!