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2025.04.03

歴史とデザインが響き合う 東京ステーションホテル LIBERTY特別ルーム誕生

時を重ねるほどに、その存在が美しく際立つものがある。 東京ステーションホテルもまた、そのひとつだ。1915年の開業以来、東京駅丸の内駅舎とともに日本の迎賓文化を支え続け、2025年、ついに開業110周年を迎える。この節目の年、歴史あるホテルが迎えたパートナーは、創業150周年を迎える英国の老舗ファブリックブランド「LIBERTY(リバティ)」。時代と文化を超えて愛されるブランドとのコラボレーションにより、2室限定の特別なコンセプトルームが誕生した。

LIBERTYと紡ぐ、時代を超えた美学の対話


創業150周年を迎える英国の老舗ファブリックブランド「LIBERTY」。時代を超えて愛されるそのデザインは、クラシックでありながら革新を忘れず、世界中のファンを魅了し続けている。
東京ステーションホテルが試みたのは、そんなLIBERTYの美学と、日本近代建築が宿す華々しく荘重な美意識との対話だった。ヨーロピアン・クラシックでデザインされた客室を活かしながら、LIBERTYのファブリックが優雅な彩りを添えることで、まるで時代を超えて響き合うような空間が生まれている。

日本初、2室だけのLIBERTYコンセプトルーム

日本初となるLIBERTYコンセプトルームは、わずか二部屋のみの特別な空間。「HERA(ヘラ)」と「JADE(ジェイド)」、それぞれ異なる趣を持ちながらも、英国と日本の美意識が調和し、唯一無二の美しい世界を生み出している。

扉を開けた瞬間、色彩やモチーフが語りかけるように広がり、感性がそっとくすぐられる。そこには、静けさと高揚が、ひとつの景色として息づいている。

HERA(ヘラ)─ 孔雀舞う、静謐の中に宿る華やぎ


34㎡のパレスサイドコンフォートキング「HERA」は、約130年にわたりLIBERTYのデザインを彩ってきた孔雀の羽模様が印象的なファブリック「HERA」シリーズを主役に据えた一室。落ち着いたピューター※1とオイントメント※2の色調が心を解きほぐし、柔らかな心地よさの中に凛とした美しさを感じさせる。


「Hana(ハナ)」と名付けられた壁紙には、緩やかに流れる曲線が描かれ、静かな佇まいは枯山水の庭を思わせる。LIBERTY創業者がパリ万博で出会った浮世絵から着想を得たというそのデザインには、英国と日本の美意識が交差する物語が秘められている。

ディテールのひとつひとつにまで気品が宿り、まさに「静けさの中に華やぎを秘めた空間」と言えるだろう。

※1 グレイッシュで、アイスグレーのような光沢感のこと
※2 黄味がかっているクリーム色

JADE(ジェイド)─ 翡翠の深みに映える、生命のきらめき


一方、52㎡のパレスビューデラックスツイン「JADE」は、まさにLIBERTYらしい華やかな表現に満ちている。深いグリーンを背景に、大胆で繊細な花々が壁紙やカーテン一面に咲き誇り、まるで絵画のように空間を彩っている。

「JADE」の名のとおり、翡翠のような深く豊かなグリーンが基調となり、そこにほんのりと暖かな黄味が温もりを差し込む。自然が生み出す調和の美しさが、ここに息づいている。


ベッドスローには、熟練の技が光る。繊細に柄を合わせ仕立てることで、一枚の芸術作品のような完成度を実現した。ソファに配されたクッションは、帯やアンティーク着物からインスパイアされたデザイン。ここに込められたのは、日本の伝統と英国の洗練が交わる美の哲学である。

また、280cm幅のキングベッドとしても利用可能なこの部屋は、ゆったりとしたくつろぎを求める宿泊客にとって、極上のひとときを約束してくれる。

東京ステーションホテルが紡ぐ、時を超えた物語


このホテルの歴史を紐解けば、それはまさに日本の迎賓文化の歩みそのものだ。1915年、東京駅丸の内駅舎の中に誕生し、その壮麗な建築と最先端のおもてなしで、多くの賓客を迎えてきた。
設計を手がけたのは、近代建築の父と称される辰野金吾。西洋の建築様式に日本的な美意識を加えることに長けた彼は、東京駅のドームに豊臣秀吉の兜や三種の神器を想起させる意匠を施し、西洋式建築の中にも日本の誇りを体現した。



かつて東京大空襲によって三階部分とドームを失った東京駅は、60年以上「仮の姿」のまま存在していた。しかし2003年に重要文化財に指定され、復原工事が始まる。創建当時の美しさが蘇ったのは2012年のこと。レリーフには辰野が好んだ鳳凰や干支があしらわれ、戦火を生き延びたオリジナルの石膏パーツも再び輝きを放っている。

宿泊者だけが体験できる、特別なひととき

東京ステーションホテルに滞在するということは、ただ「泊まる」というだけではない。そこには、この場所でしか味わえない、特別な体験が待っている。

たとえば、かつての屋根裏空間を生まれ変わらせたゲストラウンジ「アトリウム」での朝食。天窓からやわらかな光が差し込むその空間には、創建当時の赤煉瓦が残され存在感を放っている。戦火をくぐり抜けて今もなお残るその姿は、この建物が歩んできた歳月の重みと、当時の堅固な造りを静かに物語っている。

あるいは、駅舎ドームを間近に見ることができるのも、宿泊者だけに許された贅沢だ。夜、静寂に包まれた東京駅を眺めれば、この建物が歩んできた110年の歴史を肌で感じることができるだろう。

館内を歩けば、創業当時の貴重な資料がいたるところに展示され、まるで時の回廊を旅しているかのようだ。1951年に営業を開始し、人気を博したレストラン「ばら」の記憶を受け継いだ「ブラン ルージュ」も過去と今をやさしくつないでいる。

真っ直ぐに伸びる静かな廊下には、ホテルの歴史を伝える資料が並ぶ/復原工事中に発見された、創建時の石膏レリーフ
レストラン「ばら」の面影を継承した「ブラン ルージュ」。通路や扉、絨毯など、いたるところに薔薇のモチーフが散りばめられている

どの場所にも、歴史が息づき、時が静かに流れている。
東京ステーションホテルに滞在するということは、ひとつの“物語”の中に身を置くことなのかもしれない。

時を超えて、愛される場所へ

東京ステーションホテルは、110年の歳月を経てもなお、新たな魅力を育み続けている。明治、大正、昭和、平成、そして令和── 東京の中心を見守ってきた凛とした佇まいに、新たな息吹が重なり、訪れる人々の心を潤していく。格式と気品を宿しながら、しなやかに時を超えてゆくその姿こそ、「愛され続ける空間」の本質にほかならない。

創業110周年というこの特別な一年に、歴史とデザインが響き合う場所を訪ねてみてはいかがだろう。
そこには、日常を超える静かな感動が、きっと待っている。

「LIBERTY」ルーム

販売開始
2025 年 4 月 1 日(火)より
客室タイプ
HERA(ヘラ)34 m2 パレスサイドコンフォートキング / JADE(ジェイド)52 m2 パレスビューデラックスツイン

公式ウェブサイト

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石川ともみ

神奈川生まれ、東京育ち。ファッション畑出身。数年前、ひょんなことがきっかけで、一時的に奈良興福寺のご近所に住む。以来、日本文化への興味が深まり和樂webへ。大きい建物と小さいもの、アート、旅が好き。

写真/安藤智郎 (リバティルームHERAスライド、JADEスライド(ベッド)、東京駅ドーム、廊下、アートピース、レストラン)、 その他 東京ステーションホテル提供
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