特別なゲストを招いたエンターテインメントショー
今回披露された「宴」とは、日本の季節にちなんだ料理と日本酒を味わいながら、日本の伝統芸能を楽しむことができる、10組20名の特別なゲストを招いた、エンターテインメントショー。
四季を愛でながら、独自に発展してきた日本文化の素晴しさを五感で堪能できるような趣向が随所に凝らされています。
会場に入ると、絵師・木村英輝さんによる、金箔にダイナミックな龍と鯉が描かれた大きな襖が四方に設えられていて、つい見とれてしまいます
案内役は俳優・若村麻由美さん
奥はそれぞれ舞台になっていて、龍が描かれた襖は舞踊、左右の鯉が描かれた襖は演奏、もう一方は「宴」の案内役である俳優・若村麻由美さんの舞台となっています。
やがて襖が開き、スポットライトに照らされた若村さんが登場して「宴」の開幕。四季に分かれたもてなしの最初は春。お重や水引細工の鶴や亀などが飾られたテーブルに、冷酒や料理が運ばれます。
ゲストへサーブするのは、春は舞妓さんや黒子でしたが、夏は狐面をつけた若者、秋は籠を背負った猟師、そして冬は巫女が登場。季節ごとに異なる趣向に会場は盛り上がりました。
春夏秋冬の芸能を眼の前で
宴の冒頭、舞台では若村さんが春の詩を朗読します。
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる
やがて日はうらうらと立ち昇りゆったりと満ち満ちて
世の中が上気加減に匂い立つ春の日
暖かな空の下柔らかな土の上で万物が目覚める朝がきました。初々しく咲くのは桃の花
三月三日の雛祭りにはお雛様の道具を揃えて花を飾って白酒もお召しませ
いたずら好きな柳の新芽が小さな繭の中からすっとした若葉の姿を現せば
桜は凛とあでやかに
大きな花びらを枝の底ここに結び始めて
いよいよ春も深まります
続いて、演目『長唄 元禄花見踊り』を説明。その後、龍の襖の舞台がぱっと明るくなると、京都の芸妓舞妓によるあでやかな舞踊が開幕します。
舞台で披露される伝統芸能も季節ごとに変わり、夏は女性トリオによる尺八と箏の演奏、秋は長唄三味線、囃子による組曲が季節感を盛り上げ、「宴」は徐々に佳境へと進んでいきます。
『長唄 鷺娘』では片岡孝太郎さんと千之助さんが親子共演
最後を締めくくるのは冬。冬の詩は次のように語られました。
冬の早朝、その窓越しの白さと重さと静けさ
もしや雪かもと思うあの気配
世の中の音に色彩も閉じ込められてあたりは一面真っ白な別世界になっていました
木の枝という枝にも雪が積もって
雪の白を枝の黒がこっそりふちどる美しさ雪はまだ降る。その中のまっさらな雪景色に足跡をつけるのが楽しくて
まっすぐ歩く
ジグザグ歩く
くるくる回る
やがて傘を持つ手が重くなり積もった雪を振るいながら空を見上げると
明るい曇り空から音もなくふわふわとちらちらと白いものが
なんとも面白く飽きずに眺めてしまう雪の夜はなおキリキリと美しい
澄める月に雪の光和えたる空は不思議なものでこの世のほかを思わせる
世の中のいろいろを白一色の世界に閉じ込めて、今降る雪のように
良いことがたくさん積み重なりますように
最後の幕が開くと『長唄 鷺娘』の舞台。歌舞伎舞踊の名曲を舞うのは、片岡孝太郎さんと片岡千之助さん親子です。雪景色のなかの白無垢姿の千之助さんが、町娘の衣装に変わって恋心を舞ううち舞台は暗転。そこには恋に身を焦がす鷺の精を舞う孝太郎さん。かつてない、夢のようなひとときが過ぎていきました。
この『鷺娘』のように、「宴」では〝親から子への継承〞や〝現在、過去、未来〞といった〝時の流れ〞が、日本の伝統として大切に表されていたことも見逃せないポイントです。この時の流れは〝干支〞にもつながり、象徴的に描かれていた龍の絵は今年の干支の辰にちなんだもの。
世界を12年かけて回る
そして、お土産の龍の絵付きの朱色の小箱を開くと、なんと12年後の招待状が! 「宴」はこれから十二支の12年をかけて世界中で美しい日本文化を披露し、次の辰年の2036年に再びホテルオークラ東京で開催されるのです。
多彩な日本の美を五感で味わうことができる「宴」。その素晴しさが世界を魅了し、再度東京で開催される日が、今から楽しみでなりません。